日本人と英語

英語の綴りは元々適当だった

2018年12月23日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語のルーツ」からテーマをいただいて書いてきましたが、いよいよ今回が最終回です。

最終回のテーマは「英語の綴り」についてです。

現代英語においては、各単語に決まった綴りがありますが、かつての英語(古英語期から中英語半ばくらい)には決まった綴りはなく、基本的に発音通りに綴るのが慣わしだったそうです。

しかし、同じ単語でも方言によって発音が異なることもあるし、そもそもどの音をどの文字で書き表すのかが決まっていたわけではないので、極端な話、単語をどのように綴るかは書く人の勝手と言った状態でした。

また、同じ人の一つの手紙の中でも、同じ単語に対して異なる綴りを用いるなどということもあったようです。

例えば、現代英語の young の中英語期に記録された綴りを集めてみると以下のようなバリエーションが認められます。

「yong,younge,yougge,yoing,young,younge,yung,yunge,yeng,yenge,ying,yinge,ynge,hong,honge,houng,

hounge,hung,hunge,hungge,heng,henge,hing,hinge,hionge,gunge,ging,ginge,yhong,yhonge,yhung,yhing,

hohng,heing,hhong,honke,hoing,huinge,heunge,hiung,iunge,jung,heonge(43通り)」

この young などはまだ序の口で、throughに至っては、とてもここにはかけるわけもありませんが、500通り以上のバリエーションが記録されているそうです。

ただ、この感覚は日本人の私たちにとっては、比較的理解しやすい傾向にあるのかもしれません。

私たちが外来語をカタカナ表記するときには、例えば、先ほどの「バリエーション」という言葉を、「ヴァリエーション」、「バリエイション」、「ヴァリエイション」などと、書く人によって変わってくることは普通にあるからです。

また、外来語でなくても、「地面」という言葉をひらがなで「じめん」と書く人もいれば、「地」という漢字は、「とち」の「ち」ですから、「ぢめん」とひらがな書きする人もいるようなものです。(ただし、こちらについては、昭和61年に出された内閣告示おいて「現代仮名遣い」として「じめん」が正解と定められています。)

日本語のお話はこれくらいにして、英語の綴りに戻りますが、このような「好き勝手方式」にストップをかけたのが「印刷技術」でした。

イギリスにおいて印刷技術が確立したが1400年代後半には、当時印刷工場はロンドン周辺に集中していました。そして、もちろんですが、本を執筆する人も圧倒的にロンドン周辺の人が多かったわけで、その人たちに使用されていた発音に基づく英語の綴りが活字として「固定」されることになりました。

まさにこの印刷によって、たまたま活字化されたロンドン周辺の人々の「適当な」綴りが、イコール英語の「正しい」綴りの誕生となったということです。

英語のスペリングに悩んでいる方にとっては、「固定」なんてせずに、書く人の自由にさせておいてくれればよかったのにと思われるかもしれませんが、実はこの「固定」がより英語を難しくする問題につながっています。

それは、「綴りと発音に規則性がない」という英語独特の問題です。

この問題についてご興味がある方は、「英語の発音と綴りが一致しない理由」にて詳述していますので、是非そちらをお読みください。

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆