日本人と英語

英語公用語化は何が問題か

2014年5月10日 CATEGORY - 日本人と英語

英語公用語

 

 

 

 

 

 

この「「英語公用語」は何が問題か」は、発売された2010年当初すぐに読みました。その時、私は楽天やユニクロの社長の採用した「英語社内公用語化」に対する鳥飼先生の批判的な意見に全く賛成でした。

それは、英語教育そのものに対する本来的な考え方だけでなく、社会の現状に対してどのような英語教育をとるべきなのかという実際的な考え方についても、鳥飼先生の意見に私はほぼ100%賛同できたからです。

また、ふとしたことからこの動画を見て、鳥飼先生の人柄にものすごくひかれたということもあります。しっかりとした考え方をベースに、相手の素人的な意見を馬鹿にせずに、常に的確な返答を気持ちよくするというやり取りの姿勢はなかなかできるものではないと思います。

私としては、英語教育に携わる学者さんにはあまりいい印象を持っていなかったこともあり、鳥飼先生のような方がこの世界にいらっしゃったことにとてもうれしくなった記憶があります。少し長い動画ですが、どうぞご覧になってください。

当初、彼女は海外売上比率が1%に満たない楽天が、会議も何もすべて英語で行うなどということは、ものすごい非効率なことであって、仕事のできる優秀な人間にとって英語ができないということだけで居心地が悪い場所にしてしまうことになると批判をしていました。

私ももっともだと思いました。三木谷社長は少し英語に対してヒステリックになっているような気がしました。おそらく、そう長くない間にこの公約を撤回、もしくはあいまいなものにしてしまうことになるだとろうと思っていました。

ところが、あれから3年がたった今、私も鳥飼先生も三木谷社長や柳井社長を見くびっていたと反省すべきかと思っています。(鳥飼先生がそう思っているかどうかはわかりませんが、、、)

実は、あの「英語公用語化」宣言ばかりが取り上げられてしまっていましたが、併せて次のような数値目標も掲げていたのです。

「将来的な目標として27か国に進出し、取扱高海外比率を70%にまでもっていく」

先述しましたが、当時楽天の海外取扱高比率は、たったの1%でした。したがって、誰もが大法螺を吹いているのだとでも思ってしまっていたのかもしれません。

つまり、楽天は当初から、グローバル企業となるという明確なビジョンを掲げていたということです。ですから、そのビジョンの前では日本人同士の意思の疎通のデメリットなど、必要最低限の想定しきったものでしかなかったということだと思います。

そして、実際にデータを調べましたら2012年10月の段階で、世界13か国で展開し、海外取扱比率は7%ということになっています。2012年のデータですからおそらく現在はもう少し上回って、当時の10倍以上になっているものと思います。

まさに、有言実行を地で行っています。おそらく、まだこの段階ですとデメリットがメリットを上回っているとは言えないと思いますが、着々と目標に近づいていることが分かります。

しかも、これは急に行うことはできずに、地道に進めていくしかないものでもあります。したがって、2010年の段階であのような宣言を三木谷社長が行ったことは大方の見方に反して「適切な経営判断」だったといえるのではないかと思います。

これは、楽天だけでなくユニクロについても同じことが言えるのではないでしょうか。

しかし、この本に書かれている英語教育に関する見方については全く持って正論が書かれています。そして、今、英語に対してヒステリックと思えるような対応をしている企業のすべてがこのようなビジョンを持っているとは思えませんので、この正論自体は日本の企業社会が問い直すべきことであることには変わりないと思います。

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆