日本人と英語

コミュニケーションは言語と文化のつながり

2017年12月29日 CATEGORY - 日本人と英語

以前にご紹介した「企業・大学はグローバル人材をどう育てるか」からいくつかテーマをいただいて書いていこうと思います。

第一回目の今回は、「言語と文化」の関係についてです。

英語力が高ければ、コミュニケーション力が高いというのは必ずしも成り立たないとはよく言われることですが、それが成り立たない原因は「文化」やそれをもとにした「文脈」です。

おそらく、中学から英語を学び始めて、大人になってから英語を身に付けた人のうち英語の映画を字幕なしで純粋に楽しめる人の割合は、極端に低いはずです。

それは、「英語で仕事をする」ことができる人の割合などと比べて次元の違う低さになると思います。

映画の中に出てくる特定の国の特定の時代で流行っていることを前提に話しているシーンは、一つ一つの単語や文を「言語として」理解できたとしても、「文脈」として理解しなければ、それは意味不明のシーンとなってしまうからです。

私は「英語を使って仕事をすることができる」と堂々と言ってのけることができますが、今までの人生の中で、アメリカ留学中も含めて「一度も英語の映画を字幕なしで楽しめたことはない」と何度も告白しています。

また、今でも「How are you?」というアメリカ人が人に会ったら必ず発する言葉に対する明確な回答ができる自信がありません。

どうしてもしっくりこないのです。

もちろん、「I ‘m fine , thank you and you?」などという謎の教科書回答はアメリカ留学を経てからはしないようにはなりましたが、「Hi」だけで済ませるのも悪い気がしますし、「Good!」と元気よく返しても、聞いてくれた相手への礼儀としての「And you?」という聞き返しのタイミングをどうしても上手にはかれないのです。

ですが、本書を読んでその悩みからはじめて解放されるような気がしました。

なぜなら、この「文化」「文脈」の問題を「国際言語」という概念で解決しようという考えの提示があったからです。

それは、英語の国際言語化が進むことによって、この「文化」の前提を「英語母国語圏文化」としない方向にシフトしていくはずだとする考えです。

英語が国際言語化し、英語を話す人全体の中での英語を母国語として話す人の割合よりも英語を第二言語として話す人の割合の方が圧倒的に多くなって行く中で、文化の主導権が「多国籍文化」に明け渡されつつあります。

つまり、それは、「How are you?」という言葉に対する明確な回答に「模範解答」はないという共通認識をすべての英語話者が持つべきだという考えへのシフトとも言えそうです。

例えば、日本人なら「どうも」というように軽く会釈しながら「Hi」で済ましたり、タイ人だったら、両手を合わせて丁寧に「Hi」だったりといった感じでしょうか。

これは、今「How are you?」という問いかけを自分と文脈を共有しないかもしれない相手に対してしているのだという認識をもって、相手の答えを待つ姿勢が重要だということだと思います。

英語を母国語に持つ人々からするとそれが幸せなことかどうかは分かりませんが、自分の母国語が国際言語になるということは、そういうことなのだと覚悟する必要がありそうです。

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆