日本人と英語

語彙の「段階的学習」について

2015年1月25日 CATEGORY - 日本人と英語

語彙

 

 

 

 

 

前回のブログ では、書籍紹介ブログでご紹介した「英語屋さんの虎ノ巻」が、英語本として、受験生にもビジネスマンにも参考になるノウハウが非常に充実しているとお伝えしまし、日本人がここまで受験勉強として英語を学び、試験に取り組んでいるのに、結局「英語が使えない」のはなぜかという問題提起について取り上げました。

今回は、本書の中に「語彙」についての記述があったことから、この部分について問題提起をしてみたいと思います。

その「語彙」について著者はその大前提として以下のような発言をしています。

「語彙に関する限り、ひたすら努力するより外に打つ手はない。『学ぶことに王道はない』という言葉のとおりである。」

これでは、ノウハウでも何でもないよという感じですが(笑)、しかしこの点については、著者の発言は正論だと思います。

そのため前回のブログ の中で紹介したランゲッジ・ヴィレッジの「中学3年分の文法を2泊3日で血肉にする講座」の中においても、文法の構造理解とそれを発話に結びつける技術についてはこの講座の中で確実に習得させることを講師である私の責任としていますが、その文法構造に載せるべき「語彙」についてはすべて生徒さんの責任だとあらかじめ言わせていただいています。

つまり、著者と同様突き放しています。

とはいえ、ある程度はその語彙の深みがどのくらいなのかという感覚くらいは、学習者としてつかんでおかなければ明確な目標設定とはならないため、何らかの基準を生徒さんにお伝えする必要はあると考えています。

そこで、私なりの「語彙」の習得方法についての考え方を述べてみたいと思います。

私は「語彙」については「段階的」に学習することが重要かと思っています。

まず第一段階は、中学三年間で習う語彙をしっかりおさらいすることです。その分量としては一般的に1000語程度と言われています。

実はこの1000語を完璧にすることはそれほど大変ではありません。これが、高校で習う語彙はそれ以外に2000語で合計3000語となるわけですが、この中学の1000語と高校の2000語とでは圧倒的に覚えやすさが違います。

その違いの源は、どれだけ「生活に密着」しているかです。

例えば、同じ7文字の単語でも「explain(説明する)」は難なく記憶に残りますが、「exploit(開発する)」は一度覚えても何度も忘れてしまいます。

ですから、まずは中学三年分の教科書をひっぱり出してきて語彙を全て完璧にします。この段階は、ほとんどの方にとって覚えるというよりは見直すという感じですぐに仕上がってしまうと思います。

次の第二段階は、中学三年分の語彙では足りない「生活に密着」した語彙を探し出して記憶することです。これらは、これらは、「生活をする」という姿勢で英語と付き合うことで簡単にピックアップできます。ですから、1週間くらいランゲッジ・ヴィレッジの国内留学生活をすれば、かなりの部分出し切ることができると思います。

ただ、実際に国内留学をしなくても「しなやか英語辞典」サイトを見れば、ある程度は体感できるようになっていますので是非ご参照ください。

先ほど、中学三年分の語彙は「生活に密着」していると言いましたが、実は、本当に「生活に密着」しているものについては抜けているものがかなりあるのです。例えば、「overflow(水があふれる)」「crouch(かがむ)」「tangled(コードなどが絡まる)」などです。

これらの語彙も、「生活に密着」しているわけですから記憶に残りやすいというのは言うまでもありません。そして、この第二段階までの語彙で、普通に生活する分にはほとんど問題ない程度に到達します。

ですから、ビジネスマンが「使える英語」を身に着けることを目的にしている範囲では、ザルに水を入れるかのごとくTOEIC受験用の単語リストなどを使って無理やり頭に入れるような非生産的なことをする必要はありません。(この勉強法を続ける限り、その直後のTOEICではそれなりの点を取れるかもしれませんが、後に残る財産としての「語彙」にはなりません。)

グローバル社会の到来だと言われる中でもほとんどのビジネスマンにとっての「語彙」としては、この第二段階で十分だと思います。ただ、その業界のプロフェッショナルとして英語を武器にしていくことを念頭に置いているなら次の第三段階まで頑張るべきです。

最後の第三段階は、あなたの業界において必要とされるいわゆる専門用語を「語彙」を記憶するということです。

先ほど指摘したような、TOEICの試験対策をするために、やみくもに覚えようとしている方を見るとこのことを強く訴えたくなります。

例えば、あなたが「自動車業界」に身を置いている場合、TOEIC受験用の単語リストに「antidepressant agent(抗鬱剤)」があったとしても、それを無視して、「hydrodynamics(流体力学)」を優先的に覚えるべきだということです。

なぜなら、「antidepressant agent(抗鬱剤)」という語彙は製薬業界という「業界に密着」しているし、「hydrodynamics(流体力学)」という語彙は自動車業界という「業界に密着」しているといえるからです。

そして、たとえ「antidepressant agent(抗鬱剤)」といったような専門用語語彙であっても業界にとって「必然性」があれば、「生活(業界)に密着」していることになり、その業界人にとっては忘れなくなります。

このように、自らの置かれている環境に英語を結び付けて考えるという姿勢を身に着けるべきなのですが、なかなかそれができない。多くの日本人は、TOEIC受験用の単語リストにあるものはなんでもかんでも覚えなければならないと思いこみ、覚えては忘れ、また覚えるという非生産的なことを繰り返しがちです。

これは、自分の進む道に関係なく「受験」という統一された枠の中でやるべきことが決められた「勉強」しかしてきていない日本人独特の「性(さが)」をビジネスマンになっても引きずっている証拠と言えるかもしれません。

どちらにしても覚えなければならないという意味では『「語彙」を学ぶことに王道はない』というのは確かですが、少なくともこの語彙の「段階的学習」はその王道を指し示す地図の役割くらいは果たすのではないかとは思っています。

 

 

 

 

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