日本人と英語

多読、速読は最近のトレンドではない

2019年4月28日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語に強くなる本」からテーマをいただいて書いてきましたが、第六回目の今回で最終回です。

最終回のテーマは、「多読」「速読」についてです。

昨今、「多読」「速読」の重要性は非常に高まり、最近のトレンドだと思われています。

その理由の一つが、TOEICが、多量の文章を読み込ませてそれにかかわる情報処理能力を問う試験であるため、その対策として「多読」「速読」の重要性が当たり前のように問われるようになったことだと思います。

ですが、本書は60年も前に出版されたものでありながら、この二つの重要性についてその理由とともに、非常に説得的な説明とともに指摘されています。

前回の記事で引用した著名な英文学者である中野好夫氏のエピソードで、先生いじめのために実行された徹底的な研究を伴ってテキストを学習する「精読」の重要性とともに、反対に辞書を使わずに多量の英語をそのまま頭に入れて処理する、すなわち英文の理解に日本語の理解を介入させないトレーニングを自らに課していたことが紹介されていました。

その部分を引用します。

「中野氏はあらゆる角度から精密に、徹底的に、研究する『精読』と同時に、全く対照的な方法とっていました。それは、少しやさしいテキストをできるだけ辞書を引かずに読む。少しぐらいわからない単語があっても、それを知らないと全体の理解の上でどうしても困るという場合を除いてできるだけ辞書を引かない。そして、頭からセンス・グループ(いくつかの語が集まって作り上げている群)、センス・グループと読み下していく。こういう方法です。最初この方法で終わりまで来ても、さて、どういうことが書いてあったかはっきりしなかったそうですが、それでもかまわず続けていったところ、だんだん早く、だんだんはっきり内容がつかめるようになったということです。」

まさに、最近のTOEIC関連書籍に最新の情報のような顔をして出てきてもおかしくない解説ではないでしょうか。

そして、そのような方法がなぜ必要なのか、その理由についても次のように非常に合理的に書かれています。

「英語は早く主語がどうしたかを述べてしまうのに、日本語は最後まで延べない、という思想の構え方、感情の流れ方の違いが根本的にあるのです。そこで、英語を直訳的に訳すだけならとにかく、英語で物事を表現できるようになるためには、英語の持つ思想の構え方に慣れる必要があります。」

ここまで全6回にわたって本書からテーマをいただいて書いてきましたが、この本一冊で日本人が英語を話すことができるようになるために必要なことが、本当に過不足なく紹介されています。

それらは1961年から2019年までの約60年という時間の流れにもまれても、何一つ振り落とされることがなかったものばかりです。

逆に言えば、この60年間に行われた英語業界の出版活動はいったい何だったのかと思えてしまうほどの強烈なインパクトと信頼性を本書に感じざるを得ません。

 

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