日本人と英語

日本人が英語を学ぶということ

2019年3月1日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「子どもの英語にどう向き合うか」からテーマをいただいて議論をしていますが、第二回目の今回のテーマは「日本人が英語を学ぶ」ことの意味についてです。

日本人は自らを「英語が苦手」ということが多いですが、実はこれは二つの意味で「英語が苦手」であると考えるべきかもしれません。

まず一つは、私たちが普通に考える「英語が苦手」、すなわち英語を身に付けること自体が苦手であること、そしてもう一つはいったん身に付けた「英語力維持が苦手」であることです。

前者については、従来から何度も説明させていただいていることですので、今回は後者の「英語力維持が苦手」について考えてみたいと思います。

著者はこのことに関連して以下のように述べています。

「日本で英語を学ぶということは、英語を毎日使う『第二言語としての英語』ではなく、『外国語としての英語』ですので、仕事で使うことを余儀なくされる以外は特に必要のない言語です。普段は使わない外国語を勉強することの苦労は、日本の大人は誰でも知っているはずです。単語や語句を覚えるだけでも並大抵のことではありません。無理して頭に叩き込んでもすぐに忘れてしまいます。覚えておいてイザ、という時に使えるようにするはどうしたらよいのだろうと誰もが悩みます。」

そうなのです。日本人にとって、この「英語が苦手」問題は、本質的には日本人にとって英語が「普段は使わない外国語」であることに起因すると考えます。

思い立って英語を勉強した結果、ある程度のコミュニケーションをとれるようになったとしても、それを使用する機会というのはそうそう頻繁には来ないので、その力を維持することができないというものです。

イメージとしては、ざるに水を入れるような感覚でしょうか。

このことについては、私も含め日本という国で生活している以上、誰もが多かれ少なかれ受け入れなければならないことです。ですが、ではどうせ忘れてしまうのなら、初めから英語など学習しなければいいということではありません。

なぜなら、前回の記事で書いたように、母語の「学習言語力」をフル活用して英語の「学習言語力」までを一度身に付けた人は、英語から遠ざかって忘れてしまったとしても、もう一度学習をし始めると、一度到達したレベルまでに戻るスピードは一度目の時のスピードに比べて圧倒的に早くなるからです。

このことは、小さいころに外国生活を経験して「会話力」のみを身に付けた人が、日本に戻ってきて英語を使わない時間が長くて忘れてしまった場合には決して起こりえない現象です。

この事実を知っていれば、英語を学習するのであれば「学習言語力」までを身に付けようとするモチベーションが高まりますし、一度そのレベルに達した方は、使わない時間が長くなり、スムーズに英語ができなくなっている現状に対して、必要以上に嘆くこともなくなります。

イメージとしては、一度水が入ったざるの水位までは、その気になればいつでもすぐに水は入れられる感じです。

そうなれば、「英語が苦手」だという日本人の共通認識にも変化が表れてくるのではないかと思います。

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