日本人と英語

現在分詞と過去分詞について

2019年3月17日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語のこころ」からテーマをいただいて書いていますが、最終回である第三回目のテーマは「現在分詞と過去分詞の混乱」についてです。

私は主宰する「中学三年分の英文法を血肉にする講座」において、現在分詞にしても過去分詞にしてもどちらも「分詞」すなわち動詞から分かれて他の役割を果たす詞(言葉)であり、具体的には現在分詞はその動詞をそのまま形容詞っぽく、そして他動詞の過去分詞はその動詞を受身の状態(自動詞の場合は、完了の状態)で形容詞っぽく働くというように定義しています。

しかも、ここでは「形容詞っぽく」という中途半端な表現をしましたが、それが頻繁に使われると、interestingやbrokenのようにそのものずばり「形容詞」として分類されるようにもなります。

著者は、日本人とこの現在分詞と過去分詞の関係について以下のような指摘をされています。

「日本人はかなり早い段階で英語の『分詞用法』について学ぶようだが、意外に使いこなせていないようだ。一般の日本人大学生が書いた英作文を読むと、例えば『来週、鹿島アントラーズの試合を見に行くので、僕はワクワクしている。』のつもりで『Next week, I am going to go to a Kashima Antlers game, so I am very exciting.』のように書いたり、『先週、鹿島アントラーズの試合を見に行った。ワクワクするような試合だった。』のつもりで、『Last week, I went to see a Kashima Antlers game. The game was very excited.』のように書いている文に出会うことが頻繁にある。これは単に書き手が使っている『形容詞化した現在(過去)分詞』の元となる他動詞の本来の意味を把握していないことに加えて、その意味を英和辞典で確認していないだけの話だろう。辞書を引く労を惜しまなければいいという単純な問題であり、少し気を付ければ上述のような文は生れてくるはずないのだ。」

しかし、この点については私は著者とは少し異なる認識をしています。

というのも、私はこの問題は実はもっと根深い問題のような気がするのです。それは、日本人の多くがどんな言語にもその別ががるはずの「自動詞」と「他動詞」の区別がついていない、もしくは少なくとも英語圏の人々に比べて圧倒的に意識が低いのではないかという認識です。

私は、前述の文法講座の中で、「自動詞」を「その動詞自らで完結する動作を表す詞」、そして「他動詞」を「他の名詞を目的語に採らなくては完結しない動作を表す詞」であると定義しています。

つまり、過去分詞の受身表現というのは、元の主語すなわちその状況を作り出した主体(原因)が存在しなければ成立しないことを意味します。

もっと言えば、日本人が「excite」という他動詞を自動詞と混同してしまうということは、この動詞の概念に関する「因果関係」についていい加減にとらえているということではないかと思うのです。

これ以外、例えば「驚く」や「満足する」という自動詞にも同じことが言えます。

「ワクワクする」「驚く」「満足する」という自動詞が日本語では成立してしまうこと自体、そのような状態にさせた「主体」の存在を無視しているということです。必ず、ワクワクしたり、驚いたり、満足したりするためには原因があるはずなのにです。

これは、厳しいことを言えば日本人が言語に対して欧米人に比べて「無関心」であるということではないでしょうか。

その意味で、私は私は、著者が指摘するように単に「辞書を引く労を惜しまなければいいという単純な問題」で済まされないのではないかと思うのです。