日本人と英語

「becauseは文頭で使ってはいけない」説の真偽

2019年8月30日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の新常識」よりテーマをいただいて書いていますが、第四回目のテーマは「becauseは文頭で使ってはいけない」説についてです。

私が、「中学三年分の英文法を血肉にする講座」において受ける質問で、回答に困るものの一つに以下のような質問があります。

「学校で『because』は文頭においてはいけないと習ったのですが?」

というのも、私は講義の中で、「『because』は副詞節を作る従属接続詞だから、副詞と同様にどこにおいてもかまいません。自らの希望に従い、文頭に置いたり、文末におくなど自由にしていただいて構いません。」という説明をしているのですが、その際にいただく質問です。

そもそも、私はこのような「説」があることすら知らなかったので、最初はその受講生が勘違いをしているのではないかと思っていましたが、その後も何人も同様の質問をされたので、私としてもかなり気になっていました。

しかしながら、そのような質問は講座を受講する中高生からしか入ってこず、彼らも「学校でそう習った」としか言ってくれませんので、なかなかその真偽について確認する機会がありませんでした。

ところが、本書にはこの件についての説明がきっちりされていましたので、以下にその部分を引用します。

「(SVOOとSVO+to ○○ の違いが典型例ですが、)話者が伝えたい重要な情報や相手にとって初めて耳にする新しい情報(この場合はto ○○)は文末に、という『文末焦点の原則』が英語にはあります。becauseを使うのは、相手にとって新しい情報となる理由や原因を説明するときですから、because節は文末ということになります。だからと言って、文頭では使えないというわけではありません。主節の方がより伝えたい情報であれば、文頭において構わないわけです。」

私が、彼らの指摘に対して返した反論はまさにこの部分なのですが、彼らがそれに対して納得できたとは思えません。彼らにとっては、「学校の先生」という権威の言っていることをどうしても無視することができないからです。

この権威の強さは侮れません。

「実際にランゲッジ・ヴィレッジの外国人講師だって使っているよ。」と伝えたとしても、全面的には納得してくれない場合が多いですから。

ちなみに、複数の外国人講師に確認したところ、感覚的には世間で使われるbecauseのうち、1割くらいは文頭で使われているのではないかとのコンセンサスを得ています。

ではなぜ、学校の先生はこのような原則を差し置いて、この「説」を展開するのか、この理由こそが知りたいと思うわけですが、それには以下の文言がヒントになるように思います。

「sinceも『~なので』『~だから』という意味の接続詞として使うことができます。Since the hurricane is coming, we need to evacuate.のように、sinceは相手も分かっているようなことを理由として示す時に使いますから、becauseとは違って文頭で使うことが多くなります。つまり、『ご存知の通り~なので』というニュアンスになります。」

つまり、同じような意味であっても、そのニュアンスの違いとして、sinceとbecauseの対比が強調されることで、いつの間にか、「since」は文頭、「because」は文末、という使い分けが自然と出来上がってしまったのではないでしょうか。

今後は、このあたりまでの情報を中高生の受講生に披露することで、何とか納得をもって理解していただくようにしたいと思います。