日本人と英語

I`m loving it. の謎

2018年12月21日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語のルーツ」からテーマをいただいて書いてきましたが、第五回目の今回のテーマは、「進行形にできない動詞」についてです。

「進行形」については、本書に以下のようにまとめられています。

「進行形は、一般的に意識的にやったりやめたりできる動作について今現在行っている最中であることを表すため、drink eat run swimなどの動作動詞しか進行形にできず、状態を表す動詞、すなわちbe動詞や一般動詞でも状態を表すbelong like love know wantなどは一般的には進行形にできない。しかし、本来は進行形にできない状態動詞をあえて進行形にした場合には、意識的に一時的に行われていることであるというニュアンスが付加される。例えば、He is kind to everybody.をHe is being kind to everybody.にすると、彼は本来は皆に親切にするタイプではないが、今だけは親切なようにふるまっているというニュアンスを伝えることになる。」

このことは、受験英語レベルでも特別なことではなく、また私が主宰する「中学三年分の英文法を血肉にする講座」においても同様の説明しております。

ですが、私にはそのような理解のもとではなかなか理解できない事例がありました。

それは、皆さんお馴染みのマクドナルドのCMのフレーズ「I`m loving it.」です。本書にその部分についての指摘がありましたのでご紹介します。

「マクドナルドのCMキャッチについては、前後の文脈がない分、解釈の可能性も広がるが、やはり『今』が強調されると同時に、動作動詞的なニュアンスが付加され、さらに口語的な軽い響きの表現であることも含めて日本語に置き換えれば、『今これにハマってる』と言ったところであろうか。マイブームに乗ってマクドナルドを楽しんでいる最中であるという言外のニュアンスが生まれていると言えそうである。」

ということなのですが、私としては「I love it.」という現在形を使用すれば、「マイブーム」ではなく、「不変的に一般論として好き」というニュアンスで好きの度合いが「深く」表現され、企業としてはそちらのニュアンスをとるべきではないかとも思うのですが、そこはマクドナルドがファストフード企業であり、むしろ「軽いノリ」を敢えて重視したととらえるべきということで一応の納得をしました。

ただ、本書には、それを逆手に取った面白いCMの紹介がありましたので併せてご紹介します。

これは、アメリカの医療関係者が組織するある団体がこの「I`m loving it.」というキャッチフレーズをうまく利用して作ったファストフードの健康への害をアピールするコマーシャルです。

「言うまでもなく、ここでの I was loving it.は、I`m loving it. などといってハンバーガーを食べ続けるとこういうことになりかねないですよという強烈な皮肉である。しかしもう一歩進んで、遺体の男性が食べかけのハンバーガーを手にしているというこの文脈を考慮し、また進行形で使われたloveが『楽しむ、堪能する』というような動作動詞的な意味を帯びているものと考えれば、I was loving it (when I died). 『(死んだとき)私はこれを堪能していました。』というもう一つの意味が見えてくる。単にキャッチコピーをひねっただけでなく、文脈から生まれるこのような意味を利用し、ハンバーガーと死をより直接的に結びつけることで一層強烈な皮肉が生み出されている。」

もともと、微妙なニュアンスを伝えるための例外的な表現であるので、このフレーズを、私の講座の中で「状態動詞の進行形」の事例として利用させていただこうかなとも思いましたが、あまりにもこの事例のニュアンスが「微妙」過ぎて断念することにしました。(笑)

英語とは全く関係ない話ですが、特定の企業を暗示(ここまでですと明示と言える)して、ここまで強烈に攻撃するCMが放映されることに唖然としてしまいました。

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