日本人と英語

It`s me.は正しいのか?

2018年12月14日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語のルーツ」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目の今回のテーマは、「It`s me. は正しい英語か」です。

これについては、私自身、普段から当たり前のように「It`s me. 」「It is him.」を使っていますし、むしろ「It`s I. 」「It is he.」の方に違和感を感じてしまっているほどです。

これらは、主語を説明する、すなわちS=Cを表すものですから「It`s I. 」「It is he.」が正解であることは当然です。なのにもかかわらず、この正解の方に「違和感」を感じてしまうところがまさに著者の下記のような指摘そのものだと感じます。

「これらは格変化形の衰退というよりは、格変化をも含めた文法的な感覚の衰退を示しているとも言えそうだ。」

著者のこの痛烈な指摘を受けて、英語を職業とする私としては反省しきりなのですが、実はこの「感覚」は、ネイティブスピーカーの中でも非常に根深い問題であるようなのです。

その根深い問題とは、この「感覚」に対処しようとして、必要以上に「修正」意識が働き、結果的に文法的な間違いを犯してしまうことです。

著者はこのことを「過剰訂正」という言葉で説明しています。

つまり、「目的格」が誤りで、「主格」が正しいというケースが多く、教育の場でもそのような指摘が頻繁にされた結果、実は「目的格」が正しく、「主格」が誤りであるにもかかわらず、自分をスマートに見せたいという意識によって、逆に誤った使い方をしてしまうという現象です。

例えば、以下のような表現です。

They invited my wife and I. 

これは、invitedが他動詞なので、確実に次に来る名詞は目的格ですので、I ではなくmeが正解です。

This is just between you and I.

これは、betweenが前置詞で、前置詞の後には必ず目的格が来ることから、I ではなくmeが正解です。

これらの誤りの根本原因は、Iとmeのそれぞれに対して本来感じられたはずの「格」の感覚が多くの人々にもはや感じられなくなってきていることだという著者の指摘です。

そして、この著者の指摘は、現代日本語にも通じるものではないかと思いました。

「~でよろしかったでしょうか?」「~円からお預かりいたします。」というような、いわゆる「コンビニ敬語」がそれにあたるような気がします。

これらも、手っ取り早く自分をスマートに見せたいという意識が、適切な文法感覚をベースにした正しさの意識に勝ってしまうという現象だと思います。

少なくとも、言葉を仕事にしている私としては、常に適切な文法感覚をベースにした正しさの意識を大切にしていかなければと、大いに反省しました。

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