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マーケッターの仕事

2017年5月14日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

以前の記事で、ユニバーサルスタジオジャパンの復活の立役者となったマーケティング責任者の森岡氏の「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか」をご紹介しましたが、その次作である「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」を読みましたのでご紹介します。

私は今までいくつものマーケティング関連本を読んできましたが、その中でも、他の追随を許さない第一級の本でした。

著者は本書において、USJでの自らのマーケッターとしての生々しい経験を理論に当てはめることによって、マーケティングとはなにか、マーケッターの仕事とは何かを私たちに分かりやすく説明してくれています。

実際に、ご本人も高校生の娘さんでもマーケティングの本質を理解できるように書いたとおっしゃっていますが、まさにその通りだと思いました。

マーケッターの仕事を、著者の言葉を借りて一言で表すと次のようになります。

「会社として頑張るべきポイント、すなわち『どこで戦うか』を正しく、明確に設定すること。」

あとは、その会社の社員が一丸となって、そのポイントで努力していけばよいわけです。ですから、マーケッターとしては基本的には、これさえできれば、「一流」ということになるのだと思います。

しかし、著者も含めて「超一流」のマーケッターは、このことに加えて、次のことも実現してしまうようです。

「そのことを全従業員に徹底して理解させ、全努力を集中させるように仕向け目的を達成させること。」

通常、後者は、もはや「マーケッター」の仕事の領域ではなく、「経営者」の仕事の領域であると思いますが、いわゆる中小企業では、大方の場合、その二つを同一人物が担う必要性が高まりますし、著者ご自身も客観的にどうかは別として、USJも中小企業であるという認識を持って仕事をしていたようです。

そして、もう一つ重要な要素として、マーケッターは常に「消費者の代理人であること」を指摘されていました。

しかしながら、この要素を持ち続けることは、経営者個人を超えて会社の組織としての成長を考えた場合に、根本的に難しいことだと言います。

その理由は、次のようなことを考えてみると分かりやすいと思います。

企業の創業者は、自分が「消費者」の時に「こんな商品(サービス)があったらいいな」と思って、それを具現化し、その会社の商品(サービス)として世に出します。

ですから、この時点で、起業家は「消費者の代理人であること」というマーケッターとしての重要な要素を満たしている場合が多いため、その商品(サービス)はヒットします。

その後、その企業が継続的にヒットを飛ばし、順調に成長するかどうかは、その経営者兼マーケッターである起業家個人への依存を脱却して、その会社が組織として、「消費者の代理人」たるマーケッターを継続的に育成し続けられるか、そしてそのマーケッターが指示した方向に社員が一致団結していけるかに関わってくるからです。

つまり、ここが根本的に難しいのです。

なぜ難しいのか、それは「個人の利害を会社全体の利害に優先させてしまう」人間のほうが多いという現実があるため、組織が大きくなるにつれて、その傾向がより顕著となり、会社の利害と社員個人の利害が必ずしも一致しなくなっていくからです。

その結果、「消費者視点」を犠牲にしてでも、社内の利害調整を優先して、「消費者の視点」からかけ離れた「落としどころ」に着地してしまうのです。

だからこそ、企業には「超一流」のマーケッターが必要になるのです。

特に日本企業の多くは、この「マーケティング」をことさら軽視し、「技術」一辺倒でやってきました。

ですが、そんな日本企業だからこそ、その「技術」に「マーケティング」という車輪のもう片方を加えることで、大きく発展する伸びしろがあると言えるのです。

本書は、日本企業に「マーケティング」を取り入れさせる非常に大きなきっかけとなるような予感をさせるほど価値ある一冊だと思います。

 

 

 

 

 

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