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本当の「脱」詰め込み教育

2014年7月6日 CATEGORY - 代表ブログ

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皆さん、こんにちは。

以前「キュレーション」に関する記事を前篇後編の二回にわたって書きましたが、後編にて取り上げたセブンイレブンの鈴木会長とともにそれを実際に上手に実社会に応用している例として頻繁に取り上げられる方がいらっしゃいます。東京都の義務教育初の民間人校長として有名でつなげる力」の著者である藤原和博氏です。

藤原氏は起業家養成機関とも呼ばれる?リクルートを経て03年から5年間にわたって杉並区立和田中学校の校長をつとめられました。「私立を超えた公立校」を標榜し、社会と教室をつなぐ「よのなか」科、学校と塾をつなぐ「夜スぺ」、学校と地域をつなぐ「地域本部」など世間をあっと言わせるプロジェクトを実行に移し大成功をおさめました。そして、そのモデルは全国の公立中学のモデルになりました。

これらのプロジェクトで伸ばそうとする力は受験勉強のような「正解」のある「情報処理力」ではなく、「正解のない」問題に対して自らの知恵を総動員して納得解を導く「情報編集力」です。

もちろん、文科省が万全の態勢で臨んだ「ゆとり教育」も狙いは同じだったかもしれません。当時、ほとんどの国民が望み、マスコミが支持し、有識者や評論家も文句なかった路線でした。しかし、その路線が結果的にどうなったのかは日本国民の全員の知るところです。それと対照的に「ゆとり」路線をまっすぐに突き進んだフィンランドが、PISA型学力で世界一になっている事実もあります。

狙いは同じだったのに、藤原氏やフィンランドのケースは成功し、文部省の「ゆとり教育」は失敗しました。それでは、藤原氏が成功し、文部省が失敗した原因はいったいどこにあるのでしょうか。

それは、生徒の「情報編集力」を伸ばすことを求められる学校側に、もっと具体的に言えば教師に「情報編集力」という発想自体がなかったことです。つまり、「脱詰め込み教育」の先の具体的イメージがまったくつかめない中で「脱詰め込み教育」に踏み切ったことだと思います。

それでは、その具体的イメージを教師が持つことができないのであれば、学校はまず何をすればよかったのでしょうか。

それが、藤原氏の活動のキーワードである学校以外の資源を「つなぐ力」だったということだと思います。教師自らが「一人の力で何かを実現することなど不可能だ」という前提に立って、自分以外の力を「つなげる」すなわちネットワークを構築することこそが重要だということです。

そして、その「情報編集」の視点がセブンイレブンの鈴木会長が「お客様の立場」であったのに対して藤原氏の視点は「生徒の立場」「生徒の親の立場」で考えるという視点です。絶対に教師や文部省による「生徒のために」ではありません。

こうなってくると、日本における教育改革はすなわち組織改革だということが明らかになってきます。カリキュラムなどのコンテンツを入れ替えることでどうにかなるものではありません。

「圧倒的なパフォーマンスを体現するビジネスマン」

「本音を語り、その言葉に責任を持てる大人」

これらのようなかっこいい「脱詰め込み教育」を体現しているような人材を学校教育に巻き込む具体策が今求められていると思います。

ここで、藤原氏のプロジェクトの一つである「よのなか」科の授業の様子をご覧いただきます。

この授業は藤原氏自らが担当されていますが、「よのなか」科は基本的には世の中における様々な実社会で活躍する大人を講師に招き、「正解のない」問いについて考えるものです。この授業の中で特に感心したものとして「コスト」意識があげられます。

子どもに対してとかく「お金」にまつわる話をタブー化したがるのが日本人です。しかし、「お金」の問題は将来絶対に避けて通れない問題です。にもかかわらず、子供に対して(最終的に大人になるまで体系的に正面から教わる機会はほとんどありません)お金の基本的知識を身に着けさせないがために起こる悲劇は枚挙にいとまがありません。

ならば、様々な「よのなか」のことを学ぶ中で、ありとあらゆる事象にお金が絡まざるを得ないことを子供に理解させ、自らそれをコントロールする技術を身に着けさせるのは当然やるべきことではないでしょうか。そういう意味でこの取り組みは、日本では「お金=悪」的なイメージを子供に持たせる傾向があることに対する藤原氏のアンチテーゼなのだと思います。

繰り返しますが、日本における教育改革はすなわち組織改革です。

その視点から考えれば、昨今の教員の質の低下を食い止めるための議論で教師の「専門性」を高める目的で「教職大学院」へ一本化すべき云々の話が出てきていますが、これなどあまりに的外れで情けなくなります。

今、教育組織に必要なのは、「よのなか」と「つながる」力を持った人間です。「つながる力」を身に着けさせることができるのは「つながる力」を持った人間だけです。

ならば、教師の質を高めるための方策は、「社会経験」を資格要件に課すことでしょう。どうせ、教職大学院を要件にすることを考え、今よりも教師採用のコストを上げることを覚悟するのであれば、最低5年は民間企業での経験を持つことを最低要件とすることで当然予想されるコスト高は許容の範囲のはずです。

教育は何よりも優先順位の高い国家的投資であることを忘れてはなりません。

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