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英語民間試験20年度見送り

2019年11月3日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

2020年の大学入試改革における英語民間試験導入に関するニュースを継続的にご紹介するシリーズの中で、前回、この問題に関するテレビ番組において、萩生田文科大臣の「身の丈」発言が物議を醸しているとの記事を書きました。

萩生田大臣は、その時点で、「受験生に不安や不快な思いを与えかねない、説明不足な発言だった」として謝罪しながらも、「制度自体は20年度での実施に変更なし」との方針を明らかにしていました。

しかしながら、先日(2019年11月1日)、萩生田大臣は会見で「英語民間試験20年度見送り」を決定したとの発表を行いました。

以下は、日経電子版の記事のからの引用です。

「2020年度に始まる大学入学共通テストを巡り、萩生田光一文部科学相は1日の閣議後記者会見で、英語民間試験の20年度の活用を見送る方針を正式に表明した。24年度に実施する入試に向けて導入を進める考えも明らかにした。また『文科省と民間試験団体との連携が十分でなく、準備の遅れにつながった。これ以上判断を遅らせることはできない』とも語った。今後については検討組織を設け、『仕組みを含め全面的、抜本的に見直す。1年をめどに結論を出したい』と述べた。」

前回のブログにて指摘しましたが、この問題の本質を考えた時、すべきなのは「延期」ではなく改革自体の「廃止」です。

なぜなら、この問題の根本は大学入試センターが「会話力」という本来テストでは把握することが難しい能力の測定を外部に丸投げしてその試験に対する責任を放棄していることにあるからです。

そして、この問題は英語だけにとどまりません。

国語や数学での記述(論述)問題化にも同じことが言えます。

これらの教科における「論述力」というものを、一度に何十万人という規模で測定しようとすること自体に問題があるということなのです。

これらの教科でも、英語と全く同じ構図がありますが、英語のように民間試験がありませんので、大学入試センターが、試験の主体とならなければなりませんが、その採点については、特定の民間企業に委託することになっています。

しかも、その一時のみに需要がある大学入試という性格上、大学生や主婦などのアルバイトに協力を依頼しなければならないことは明らかです。

そうなれば、「論述力」という本来幅広く評価すべき能力を、採点のために基準を「画一化」しなければならないという矛盾を抱える必要が出てきてしまいます。

そもそものセンター試験の存在意義は、各国立大学が二次試験でそのような幅の広い「論述力」の測定を丁寧に行えるようにするために、基礎学力を一定水準以上持っているかどうかによって「足切り」するためのものでした。

今回の混乱の原因だと思われている、英語における民間試験への丸投げは、「センター試験」を「大学入学共通テスト」に変更することの一部分にすぎないのです。

今回、英語に関しては「延期」を決定しましたが、大学入学共通試験自体は実施される予定ですので、英語以外での混乱は必至だと思います。

これからの社会を担う人材には、従来の試験ではかりえなかった「論理力」などが求められることは間違いありません。

ですが、それらは「一斉試験」によって評価するのではなく、最低限の基礎力を有することを一斉試験で認められた者に対して、各大学が必要に応じて行う二次試験において測定するべきものです。

文科省は、センター試験という「一斉試験」と国立大学二次試験のような「個別試験」の存在意義を確認し、それぞれに適した役割を求めていくべきです。

 

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