ビジネス英会話とはそもそも何だろう?

ランゲッジヴィレッジへの問い合わせで非常に多いのが、「ビジネス英会話の講座はありますか?」という質問です。実は、LVの講座に参加されるビジネスマンの半数以上がビジネス英会話の講座を希望されると言う事実があります。しかし、この質問には実は日本人の英語に対する大きな誤解が表れていると私どもは考えます。

そのため、私どもとしてはこの質問をお受けするたびになんとも歯がゆい感情を持ってしまうのです。

というのも、この質問が出てしまうこと自体が、日本における英語学習の目標到達地点(コミュニケーションツールとして英語を身につける)の設定が上手になされていない、と言うことを意味しているからです。

「ビジネス英語」とは、「ビジネス」+「英語」で、ビジネスの場面で用いられる英語を指します。つまり、ビジネス英会話とは、ビジネスという特定分野における用語群、もしくはそれらを多用に含んだ英語による会話です。もし「ビジネス英会話」というビジネス特定分野での専門用語があるならば、クッキング英会話、スポーツ英会話、医療英会話、芸術英会話……といったように様々な分野ごとに特殊な英会話が存在することになります。そう考えると、「ビジネス英会話」だけが特殊だという認識自体がそもそもおかしいのです。

ビジネス英語が存在するならビジネス日本語も存在する?

逆の発想をしてみましょう。「ビジネス英語」という言葉があるなら、「ビジネス日本語」という言葉も存在するのではないでしょうか。しかし、実際「ビジネス日本語」という言葉は存在しません。

わかりやすい例を挙げましょう。日本人の大卒者が入社して「ビジネス日本語」の研修を受けることはありません。ただ、ビジネスマナーやプレゼンテーションの研修を受ける場合はあります。

これは「言語」を学ぶという意識の下で行うものではなく、ビジネススキルの向上のため学ぶものです。日本語でビジネスマナーを、ビジネスプレゼンテーションをマスターするのです。ですから、LVを受講される社員様の日本語におけるビジネススキルは十分であることを前提に、LVに対しては「英語を使う力」の向上の部分に期待をされていると考えます。この点を明確にすることでLVは自らに求められている成果を確実に発揮させることに注力できるのです。

つまり、受講者もLV側も変な言い訳をせずに「英語を使う力」の向上を実現すれば自然と「ビジネス英会話」をマスターできるということです。しかも、日本人は英語ということになると取り立ててビジネススキル的なことに囚われる傾向があるように思います。このことについてもっと冷静にとらえ、目標設定を適正にするべきです。

日本語での営業トークを考えてみる

日本語でのビジネスの現場で何が必要なのかを冷静に考えてみればさらにわかるはずです。たとえばあなたが、ある会社の営業マンだったとしてある商品を顧客に売らなければならないとします。

その商談の席で、その商品を販売するために必要な言葉をピックアップしてみてください。初めは仕事と直接関係のない世間話をベースにコミュニケーションをとっていくでしょう。

そして最終的に商品説明や具体的なプレゼンの場面に移行したとしても、その言葉のほとんどは、あなたの所属する業界、もしくはあなたの会社に特有な言葉ではないでしょうか。ビジネスの成功に必要なのは相手との円滑なコミュニケーションであることは、日本語でのビジネスを考えれば明らかなのです。

ですから、ビジネスマンが英語を学ぶ上で最初に必要なことは「ビジネス英会話は存在しない」ことを理解し、『既に頭の中にある英語知識を「使いこなす」力を身に着けること』という目標設定をすることです。そこで、この理解と目標設定を確実なものとするために、以下にその両方の重要性を体感できるようなコンテンツを用意しました。

まずは、そもそもどうして日本人は「ビジネス英会話」を必要としてしまうのか、その理由を考えてみます。

日本人がビジネス英会話講座を必要とする理由

  • REASON1ビジネスなのだから日常会話よりもレベルの高い語彙が必要のはずだ
  • REASON2ビジネスなのだから日常会話よりもレベルの高い丁寧(敬語的)な感覚が必要なはずだ
  • REASON3ビジネスなのだから日常会話にはないビジネス用語が必要なはずだ
  • REASON4ビジネスなのだからプレゼンテーションなどのスキルが必要なはずだ

これらの理由が実は、いささか的外れなものであるということを以下のスキットをお聞きいただくことで証明してみたいと思います。より体感的にご理解いただけるよう、まずは日本語でのやり取りをお聞きいただきます。それによって、日本のビジネスマンがビジネスにおいて必要となる言語レベルを的確にとらえることで、適切な学習方法をとるためのお手伝いをさせていただければと思います。

ビジネスシーンA

欧米の精密機器メーカーTomato社の新製品L-Phoneの日本の携帯電話会社HardBankへの売り込み

登場人物:Tomato社のセールス担当 / John Smith HardBankの新規事業担当のメンバー 山田太郎

ビジネスシーンA

仮に、セールス現場でこのくらいのやり取りが英語でできれば現時点の日本では、グローバル人材として十分な対応能力を持っていると評価されてもよいと思っていただけるのではないでしょうか。にもかかわらず、その中で使用されている文法、語彙は英語でいえば中学三年間で学習する基礎的なものに限定されていることがわかると思います。その上で、「日本人がビジネス英会話を必要とする理由」についてもひとつずつ解説してみます。

ビジネスなのだから日常会話よりもレベルの高い語彙が必要のはずだ

EX) すみません、、、「発想」ってどういう意味ですか?

→ すべての語彙を知っている必要はありません。その語彙の意味を聞き出す力があれば問題は解決します。

ビジネスなのだから日常会話よりもレベルの高い丁寧(敬語的)な言い回しが必要のはずだ

EX) ごめんなさい、割引は本当にダメ、、でも、それ以外のことなら考えることできるかもしれません。

→ こちらが外国人だと分かっているため、誠実に対応しさえしていれば、必ずしも完璧な言葉でなくても大丈夫です。

ビジネスなのだから日常会話にはないビジネス用語が必要のはずだ

EX) 独占?あなたじゃない会社にL-phone を売ってはダメのことですか?

→ これもREASON1と同じ考えです。文脈上で十分理解は可能な場合がほとんどでしょう。「独占販売権」などビジネス用語の意味を簡単な言葉で言い換える力があれば問題は解決します。

ビジネスなのだからプレゼンテーションなどのスキルが必要のはずだ

→ これについては、順序の問題だと考えています。まずは自らの持っている英語知識を上記の程度まで「使いこなす」ことができるようになることが日本のビジネスマンにとって何よりも重要で優先順位が高いと考えます。また、これらのスキルはもはや言語としてのトレーニングの領域ではなく、ビジネススキルの領域であると考えます。ただし、本質的には少し外れますが、英語でのプレゼンを体感するという価値を提供するという意味で通常のレッスンの中に組み込む場合もございます。また、唯一「ビジネス英会話は存在しない」の例外であると考えている項目があります。大きな数値に対する感覚のトレーニングです。大きな数値に関する感覚が欧米人と根本から異なっている日本人に対する効果的なトレーニングについてもご用意しております。

ビジネスシーンB

日本の精密機器メーカーCony社の新製品L-Phoneの米国の携帯電話会社AB&Bへの売り込み

登場人物:Cony社のセールス担当 山田太郎 / AB&Bの新規事業担当のメンバー John Smith

ビジネスシーンB

ここまでで「ビジネス英会話は存在しない」というコンセプトを日本語に置き換えて考えることでご理解いただけたかと思います。次に、これを英語に置き換えて考えてみても同じように言えるということを念のためですが見てみたいと思います。

ビジネスなのだから日常会話よりもレベルの高い語彙が必要のはずだ

→ すみません、、、「発想」ってどういう意味ですか?

EX) I am sorry,,,what do you mean with “inspire”? I do not know this word.

ビジネスなのだから日常会話よりもレベルの高い丁寧(敬語的)な言い回しが必要のはずだ

→ ごめんなさい、割引は本当にダメ、、、でも、それ以外のことなら考えることできるかもしれません。

EX) I am sorry,, I can never give you discount,,

ビジネスなのだから日常会話にはないビジネス用語が必要のはずだ

→ 独占?あなたじゃない会社にL-phone を売ってはダメのことですか?

EX) Exclusive???? Do you mean that we have to allow only you to sell L-phone in your country?

当然のことですが、英語のやり取りで見ても、中学3年間に学習する文法、語彙を超えるものが含まれていないことが分かります。それにもかかわらず、何千億円のビジネスが成立してしまっています(笑)。もちろん、「発想」という語彙や「独占販売権」といった専門用語を知っているのに越したことはありません。

しかし、それらを知らない場合には、知っている語彙を利用して乗り切ることこそが重要であるということです。そして、それを次には使えるように自分の語彙として追加すればよいわけです。

つまり、「使える英語」の概念の中では、「あれば便利」くらいの認識で十分ということです。しかも、専門用語などは、そのビジネスマンが属する業界や役職レベルによっても必要性は変わってきます。ですから、これらは、ビジネスを実践する中で自然に身に着けることで十分であるということを理解してください。

あなたが「英語の研修」というスタンスで英語を学習する段階ではまずは、「ビジネス英会話は存在しない」というコンセプトを理解した上で、最低限の英語知識を「使いこなす」力を身に着けることに意識を集中してください。そのために「英語を使い倒す」環境がLVの国内留学だと思ってください。

私たち英会話業者に真に求められるべきこと

ビジネスにおいて必要な英語は決してテクニカルタームを用いた特殊な英語ではありません。そして、ときおり必要となるテクニカルタームであっても、その業界ごとに異なるため、もはやそれは「言語」の問題ではありません。つまり、LVの講師に、製造業の特殊な技術用語や医療関係の専門用語などを教えてほしいと求められてもそれに応えられるはずもないのです。

したがって、私たち英会話業者に期待されるべきことは、受講者がビジネスにおいてどのような状況におかれても、現在有している英語知識を駆使してしなやかに対応することができるようにすることです。一言でいえば、程度の差はあっても、自分自身で「英語ができる」と自信をもって言える状態にすることです。それさえ、実現されてしまえば、もはや多くの方が期待されるテクニカルタームなどは受講者が各々の必要性に応じて独自に達成されるものなのです。