日本人と英語

未来と過去 どっちら先でどっちが後?

2026年2月15日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログでご紹介した「英単語の世界#357」からテーマをいただいて書いていきますが、第一回目のテーマは「具体表現の抽象表現への転用」についてです。

書籍紹介ブログの記事内で、「新たな語義の必要性が芽生え、それらをすでにある語が吸収し、その意味のバリエーションを増やしていく」という単語の多義性を確認しましたが、それは具体的なものを抽象的なものに転用するという方法をとることがあります。

その一つに、場所を表す空間表現がより抽象的な時間表現に転用されるケースです。

以下にその部分を要約引用します。

まずは「前後関係」を示す場所表現として、

A dog was running after her.(犬が彼女の「後」を追いかけていた。)とThey knelt before the king.(彼らは王の「前」にひざまずいた。)

The dog followed me.(犬が私の「後」についてきた)とHe let her precede him.(彼は彼女を「先」に行かせた。)

それを時間に転用すると、

the year before(前年)とthe year after next(再来年)

in the preceding year(前年)とin the following year(翌年)

とこのように、英語でも日本語でも同じように、前(先)方が「過去」を後方が「未来」を示しています。

ただ、それとは正反対に、前(先)方が「未来」を後方が「過去」を示す次のような例もあります。

There is a bright future ahead on her.(彼女の「前」途には輝かしい(将来)がある。)とThat’s all behind us now.(それは皆もう「前」(過去)のことだ。)

さらに、次の文にはこのように相矛盾する二つの時間の捉え方が一つの文の中に共存しています。

We shall look forward to seeing you in the following month.(来月(後)お会いするのを楽しみ(前のめり)にしております。)

しかも、これが英語も日本語も同じような感じで相矛盾しているのが非常に興味深いです。

この矛盾した捉え方は次のような考え方に起因しているようです。

まずは、【前(先)方が「過去」を後方が「未来」】という捉え方は、

このように、時間を一方向へ動いていくものと捉え、その先頭部分を過去、それに続く部分を未来とみなすものです。一般に、動いている物体は進行方向が前方となっているよう方向付けがなされます。時間の進行を走っている電車でイメージしてみると、「現在」という地点を通過している列車の先頭部分が「通り過ぎた過去」、それより後の部分が「これから来る未来」となります。(つまりは私たちがこの状況を俯瞰してみているという感じでしょうか?)

一方の【前(先)方が「未来」を後方が「過去」】という捉え方は、

このように、時間を人間との関連で方向付けるもので、時間という列車は私たちの前を通り過ぎて過去へ向かいます。このモデルに依れば、時間列車の通過を見ている人の前方が未来で、通り過ぎて背後にあるのが過去ということになります。(つまりは私たちは現在地点に固定された状態で見ているという感じでしょうか?)

時間という抽象的概念を場所という具体的概念に転用する際に、私たち人間がどの立場でその転用するのかによって、正反対の表現になるというのは理解できましたが、それが日本語と英語双方でもありえて、なおかつ同じように使い分けしているのが非常に興味深いものでした。

 

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