日本人と英語

なぜ迷惑メールは「spam」なのか

2024年5月13日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の種あかし」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「spam」です。

「spam(メール)」とは一度に大量の主にセールス目的で送信される「迷惑メール」のことを意味することはもはやインターネット環境下にある人であれば知らない人はいないでしょう。

いや、知らない人はいないどころか、デスクワークをする人であればまず間違いなく一日を「spamメール」の削除作業から始めることが習慣になっていることでしょうから、もはやなぜそれを「spam」と呼ぶのか疑問に思うことさえしなくなってしまっているというのは私だけではないと思います。

まだこの言葉が一般化したばかりの2006年出版の本書はその純粋な疑問に目を向け、「spam(メール)」が単語が新しい言葉として生みだされた瞬間を描写していましたので、その部分を以下、引用します。

「spamとは 『メールを送りまくる、無差別に送る』 といった意味の動詞で、比較的最近一般化した言葉で、こうしたメールがいまや年に7兆通以上送られているというのだから恐れ入る。こういうメールの送り主のことは、spammer と言う。また、送られるジャンク・メールのことは spam とも言う。spam の語源については諸説あるが、これが1937年に誕生した 豚肉の缶詰 Spam からきていることは間違いない。 ハワイなどではこのスパムを使ったおにぎりがいまでも人気がある。ただ第二次大戦中に戦場でスパムばかりを食べさせられた兵士たちのあいだではこれがジャンクフードの代名詞になり、さらにイギリスのテレ ビ・コメディ・ドラマ『モンティ・パイソン』の中でスパム料理しかないメニューを見せられたレストランの客が騒ぎ出して、一堂 が『スパム, スパム』 と連呼しはじめるシーンからこの言葉が有名になり、ジャンク・メールの代名詞になったと言われている。」

これがそのコメディドラマ「モンティ・パイソン」の決定的なシーンです。

確かにこれを見ると、相手の事情や気持ちを一切思いやることもせずに、一方的に「何の意味もない(送るほうは何らかの意図はあるだろうが)」ものを投げつけられる「迷惑メール(spam)」に対する感情とおなじ、何とも言えない「むかつき(disgust)」を感じさせられ、この「缶詰肉(spam)」がまさに比喩(metaphor)として機能しているのが分かります。

ちなみに、2006年時点では年に7兆通であった世界の「spam」が今では2022年には60兆通というデータもあるようですから、およそ10倍近くに増加していることになります。

もう、その語源はもとよりその存在自体を気にし始めたらもうそれだけで一日が終わってしまいそうで、何の感情も抱かず淡々と削除作業を一日の始めにするようになったのは私たちの自己防衛反応によるものなのかもしれません。