
なぜbe動詞は活用しまくるのか
2025年2月23日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「一度読んだら絶対に忘れない英文法の教科書 」からテーマをいただいて書いていますが、第三回目のテーマは「be動詞」です。
そもそも、am are isにしか活用しないものを「be動詞」と呼ぶということを中学一年生(今では小学5年生)に何のフォローもなく教えるなんてことは正気の沙汰ではありません。
とは言え、私自身英語で飯を食わせていただく立場になったにもかかわらず、ここで初めてこのテーマに向き合うわけですから、人のことは言えるわけもありません。
その意味で本書の指摘は非常に貴重なものだと思いますので、以下その内容をまとめてみます。
今から1500年前に使われていた「古英語」にまでさかのぼりますが、いわゆる「be動詞」は次のようなものでした。
一人称(am)→beo
二人称(are)→bist
三人称(is )→biþ *þの発音は[θ]
そしてこの三つのうち一番使用頻度の高い一人称の「beo」から「be動詞」という名前が付けられました。
そのような形をしていた証拠に、ゲルマン語の直系子孫である現代ドイツ語では、同じbから始まる「bin」が英語の「am」にあたる単語として使用されています。
ただ、これではまだ「なぜbe動詞は活用しまくるのか」に応えたことにはなりません。
その後「古英語」はブリテン島にサンスクリット語(これは初めて知る知識でした)や古北欧語などを使用する人々が大勢移動してきたことから、その古英語独特の「be動詞」は次のように置き換えられました。
一人称(beo)→asmi(サンスクリット語)→省略されてamへ
二人称(bist)→art(古北欧語)→変化してareへ
三人称(biþ )→asti(サンスクリット語)→省略・変化してisへ
言語は「使用人数」の多いほうが残る特徴があるため、時代とともに多数派が変化して現在の形が残りました。
このように、be動詞の活用がバラバラな理由は、「それぞれ違う語源を持ち、時代を経て変化した」ということになります。
私は自らが主宰する「文法講座(英文法の虎ノ穴)」の中で、まず日本語にも共通して存在する一般動詞である「自動詞」と「他動詞」をSVとSVOという文型の説明に絡めてした上で、日本語には存在しない動詞である「be」動詞を「イコール動詞」という私たち日本人にとっては全く新しい概念として注意深く理解してもらうように注力しています。
著者である牧野先生も講義の中で「be動詞」は本当に奥が深くて、説明しようとすれば一冊の本が欠けてしまうほど深いとおっしゃっていましたが、その点で私も激しく同意します。