
トリビアを楽しみながら英単語を覚える幸せ
2025年1月12日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「ラテン語でわかる英単語」の帯に「トリビアを楽しみながら効率的に語彙を増やそう」という宣伝文句があったのですが、まさにその言葉通り、読み進めていく間に数多くの「あっ、そうだったんだ!」という感動の瞬間が訪れました。
今回は、その中から10個ほどピックアップしてご紹介したいと思います。
①なぜポンドは「lb.」もしくは「£」と書くのか?
天秤はラテン語でlibra、重さをpondusといい、このlibraが重さの単位として利用されていて、例えば「∼リブラの重さ」を「~libra pondus」と言っていたものが、その省略形として(単位のlibraのほうが重要なので本来はそちらを残すべきだと思うが)なぜか重さの意味のpondusがポンドという呼び名の由来となってしまった。しかし、記号としては「lb.」が採用されたということ。そして、通貨のポンドについては、かつて1トロイポンド(現在の1ポンドは453.29gに対して、1トロイポンドは373.24gだった。)の銀を通貨の単位として使用していたことに由来する。記号としては、こちらも天秤のlibraのLからとった「£」を使用する。
②なぜ「virus」を日本語ではウィルスと呼ぶのか?
ラテン語で「毒」を意味する「virus」は英語に入れられると英語発音で【váiərəs】となったが、その英語を日本語が取り入れた際、発音は元のラテン語読みの「ウィルス」を反映したため。
③「シンデレラ」は「灰かぶり姫」
ラテン語で「灰」は、cinisもしくはcinerem。ただし、シンデレラの作者グリム兄弟はドイツ人で原作の名前は「アシェンプテル(Aschenputtel)(ドイツ語で「灰かぶり」を意味する)」だったものを英語版として「Cinderella(シンデレラ)」とした。「Cinder」は英語で「灰」を意味し、「ella」はシンデレラの本名Ellaでその二つを組み合わせたもの。
④「メルカリ」はラテン語由来の社名だった
ラテン語で「商品」はmerxもしくはmercem。その派生語としての「mercari」は動詞「取引される」という意味だ。ちなみに、そのラテン語由来の英単語として「merchandise(商品)」「mercantilism(重商主義)」がある。
⑤ラテン語の「homo」とギリシアの「homos」は全く別
私たち人間を意味する種の学名を「Homo sapiens」という。「Homo」が「ヒト」、「sapiens」が「賢い」を意味する。一方、ホモセクシャルを意味する「homos」は「同じ」を意味する古典ギリシア語が由来であり、それぞれは全く無関係な言葉である。
⑥雄牛とラテン語
「雄牛」はラテン語で「taurus」という。ギリシア神話に登場する半人半馬の怪物「Centaurus(ケンタウルス)」はもちろん、大正製薬のリポビタンDでおなじみの栄養素「taurine(タウリン)」は牛の胆汁から発見されたために名付けられた。
⑦雌牛とラテン語
「雌牛」はラテン語で「vacca」という。コロナ禍において大いに話題となったワクチン(vaccine)は、乳しぼりを職業にしている人が天然痘にかかりにくいことに目を付けた英国人医師ジェンナーが、牛痘にかかった人の体から採取した水疱の液体を、天然痘未感染者に接種する実験を行い、天然痘の予防につながることを発見したことから、乳しぼりの雌牛(vacca)からワクチン(vaccine)という言葉ができた。
⑧日本語の「イライラする」の語源はラテン語か?
「怒り」はラテン語でiraもしくはiram。そして、irritate(イライラさせる)という英単語はそれが由来だという。そこで一見すると日本語の「イライラする」の語源はラテン語かと思えたが、実は違う。江戸時代までは草木の棘を「イラ」と呼んでおり、棘がたくさんある様子を「イライラ」と表現し、それがゆとりがなくせかされている感じを「イライラする」というようになったことが正しいようだ。
⑨ニヒルは「何にもないこと」?
「何にもないこと」をラテン語で「nihil」という。否定語の「ne」と「わずかなもの」を意味する「hilum」をくっつけた表現で「わずかもない=虚無」を意味する。そのラテン語由来の英単語として「annihilate(∼を全滅させる)」がある。
⑩AMとPMについて
「午前」を指す「a.m.」はラテン語の「ante(前に) meridiem(正午)」の略で、「午後」を指す「p.m.」はラテン語の「post(後に) meridiem(正午)」の略である。ただし、本来は省略形なので、a.m.とp.m.とすべき。また、英語では話し言葉でも書き言葉でも、数字が先にくるので、AM8:00ではなく、8:00AMとする。
このようなトリビアを楽しみながら英単語を覚える時間は、少なくとも単に単語と向き合うだけの時間と比べて圧倒的に幸せだと思えるはずです。