日本人と英語

There is There areの謎

2019年6月19日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「なぜその英語では通じないのか」からテーマをいただいて議論をしていますが、第三回目の今回のテーマは「~がある」の表現についてです。

「There is , There are」

これらは、中学英語の非常に早い段階で習う項目ですが、非常に難しい問題を含んでいます。

まず、一つ目の問題として指摘すべきは、そもそも主語になることができる品詞は名詞のみです。

ところが、Thereは辞書で調べますと「副詞」と出てきますので、「There is , There are」はその文型からして文法知識を駆使しても理解しにくいものです。

そして、もう一つは、本書において指摘されていた以下のような問題です。

「climate change is very difficult to predict. There are two reasons for this. という文には問題がないが、I want to study abroad. There are three goals. First, I want to talk with people from other countries.という文には問題がある。この違いは、一般論か個別論かということである。前者は、気候変動という誰にとっても共通の問題、すなわち一般的な問題についての二つの理由の存在について述べているのに対して、後者は、一般的に誰もが持っている目標ではなく、あくまでも個人の目標に過ぎないのでThere areは不適切な言い方となる。自分自身の話に限るこうした場合には、例えば、I have three goals.のように述べればいいのだ。」

ここで、かつて受験勉強の時に訳も分からず、無理強いされた記憶がよみがえってきませんか?

「There is の文の意味上の主語には 不定冠詞aをつけるべきで、定冠詞the 入れてはならない。」

その時には、ただこういう決まりだというように一方的に覚えさせられた記憶しかありませんし、実際に自分がこのフレーズを発するときにその違いをきちんと言い分けてきたわけでもありません。

しかし、この著者の指摘をしっかり確認すると、この不定冠詞と定冠詞のルールは一見正しそうには見えますが、完全なルールではないことが分かります。

なぜなら、一般論には話し手と聞き手の頭の中でイメージが共有されていない場合に使用される「a」が、個別論には話し手と聞き手の頭の中でのその「問題」のイメージが共有されている「the」が使われる可能性が高い場合が多いことは確かですが、次のような例を考えれば絶対ではないからです。

例えば、「There is the problem of immigration in Europe.」というように、一般論ではあるけれども話し手と聞き手の頭の中でのその「問題」のイメージが共有されている場合は十分に考えられます。

ですから、この「There is the problem of immigration in Europe.」はthere isのあとに定冠詞「the」が来ていますが問題ないということになります。

このように、文法的にも語法的にも非常にレベルの高い説明が本来必要なのにも関わらず、中学のかなり早い段階で、まともな解説もなく覚えさせることは非常に問題があると思います。

教える側の想像力と慎重さが求められてしかるべき案件です。