冠詞はなぜ難しいのか
2017年8月16日 CATEGORY - 日本人と英語
先日ご紹介した「英語冠詞大講座」は、一冊まるごと英語の「冠詞」について解説してくれています。
当ブログでは、語彙と同様、本書を参考に英語の冠詞についてのネタを何回かに分けて話題にしていきます。
書籍紹介ブログでも述べましたが、冠詞という部品については、私が運営する「2泊3日で中三文法を血肉にする講座」にて、非常にシンプルに「定冠詞」と「不定冠詞」の違いについて解説しており、ほぼすべての参加者がその違いについて完璧に「理解」することができるようになっています。
しかし、「使いこなす」こととなると話は全く別で、私自身も英語の文章を作成するたびにランゲッジ・ヴィレッジの講師にネイティブチェックを入れてもらうのですが、チェックが入るほとんどのところが「冠詞」の部分です。
つまり、a と theの違いについては簡単に理解できるのに、冠詞の実際の使用についてはいつまでたってもしっくりこないのです。
その理由は、「無冠詞」の状態についての理解が難しいという点にありました。
英語の名詞が無冠詞になるケースは以下の5つに分類されます。
1. 無冠詞単数(漠然抽象概念を表す場合)
漠然とは、話し手と聞き手の間で具体的にはイメージが共有されていない場合のことをいいます。また、抽象概念といっても抽象名詞とは限らず、普通名詞でも無冠詞の場合は抽象概念となります。
例えば、I go to bed. のbedは物体としてのbedではなく、抽象的な意味での「寝る場所」を指すということです。
この点、もっと分かりやすく言えば、具体性(輪郭)がないという意味でもあります。つまり、a chicken は輪郭のある「ニワトリ」ですが、chickenは輪郭のない「鶏肉(のかたまり)」ということです。
2.無冠詞単数(親近度によりtheがとれた場合)
例えば、He is still at home. I study after dinner. のように、話し手がその単語に心理的な同一感、親近感を抱いているという意味です。身近な存在なので、冠詞をつけなくたって分かるでしょ的な感じでしょうか。
3.無冠詞複数(漠然とした複数個の個体をさす場合)
They are chickens. のように、単純に話し手と聞き手の間で具体的にはイメージが共有されていない個体がたくさんいる状態を表します。
4.無冠詞複数(漠然とした複数個の個体をさすことにより事実上の総称を表す場合)
例えば、Dogs are vigilant animals. のようにある種族・種類に属するものの全体を表します。
5.理論上は冠詞がつくべき概念の名詞だが、冠詞の機能を代行する限定辞の存在により冠詞がついていない場合
my dog, this dogの類です。これについては分かりやすいと思います。
こう説明されると、わかったような気がしませんか?
でも、それでも実際に使おうとするとこれがまた難しいのです。
冠詞という部品自体が存在しない日本語を母国語にする私たちにとっては、この難しさは宿命なのかもしれません。