日本人と英語

聞き流すだけの語学教材

2014年10月12日 CATEGORY - 日本人と英語

聞き流すだけ

 

 

 

 

 

 

「聞き流すだけの英語教材って本当に効果あるんですか?」

最近、この質問をランゲッジ・ヴィレッジの生徒さんから本当に頻繁にされるようになってきました。

この教材を商材としてビジネスされている会社さんが存在する中で、言ってみれば広い意味での「商売敵」である私たちがこの教材について公に論評することはあまり好ましくないと考え、できる限り控えてきました。

しかし、この教材が大規模な広告等によって多くの人が知るところとなり、また当然にして「聞き流すだけ」というセンセーショナルな方法論に興味と関心を持たれ、冒頭のように多くの方がこの質問を「英語業界」に身を置く私たちに対して投げかけられます。

そのため、その質問に対して上記の理由からいい加減な返答でお茶を濁すということが不誠実だという印象を質問者に与えてしまう危険が生じてくるようになりました。

そこで、当該会社さんに対する不当な妨害にならない範囲で、一度私共の考える「日本人と英語」の本質的関係に即して公正な意見を述べたいと思うに至りました。

端的に結論から申し上げると、「効果はある」と思います。

ただし、広告で言っているような「本当に英語が全くダメな人が聞き流すだけ」では、駄目です。

一定の効果が生じるのは、日本の英語教育を比較的真剣に受けており、話すことはできないけれども、中学校三年分の文法と語彙はなんとなく分かっているというタイプの方が、ある程度まとまった時間「聞き流す」という場合です。

これは、私たちの商材である「国内留学」の仕組みと同じです。「一定の時間英語に触れまくる」ことによって、既に何年もかけて培った埋もれた資産を活性化させるという仕組みです。

しかし、ここで気を付けなければならないのは、「一定の時間」やりきるという点です。

これが実際には難しいのです。

私たちの商材である「国内留学」は、それを1~2週間強制的にやらなければならない環境の提供です。一旦入ったら、「一定の時間」触れないわけにはいかないのです。しかも、一方的ではなく、ずっと講師が一緒であるため、双方向性を確保することができます。

「聞き流すだけの英語教材」では、それを「一定の時間」ずっと聞いていられるかどうかが、勝負です。逆に言えば、「一定の時間」ずっと聞いていられるのであれば、TSUTAYAで100円の洋画でも確実に効果が出るはずです。

私も実際にお試し教材を聞きましたが、TSUTAYAで100円の洋画と比べたら続け易くする努力はされているとは思います。しかし、それでも、在宅教材であるという性質上、相当な克己心がある人でないとかなり難しいのではないでしょうか。

ですから、上記の二つの条件を満たした人は、実際に「効果があった」と判断され、実際に体験者の声などに正直に協力されるのだと思います。

そして、克己心にかける大部分の方は、自分自身が続けなかったから「効果がない」のは仕方がないということになるのです。(しかも、続けられる人はもともと学校教育でも努力できる人ですから「続けられる」ことと「基礎知識がある」という条件はほぼ重なるはずです。)

あと一点強調しておきたいことがあります。

それは、「赤ちゃんのように語学を学ぶ」ことが言語習得の近道だという考えについてです。

この考えについては自信をもって反論したいと思います。

この考えは一見、もっともらしい考えに見えるのですが、実際にはこの考えを成り立たせる前提が二つ崩れています。

赤ちゃんは、その時点で何の言語も身に着けておらず、意思の疎通の方法がまったくありません。ですから、「何とかして大人に対して意思を伝えないと死んでしまう」という危機感を常に抱きながら生きています。つまり、意思の疎通に対する「渇き」が大人とは比較にならないほど深刻であるという前提があります。

また、赤ちゃんが「語学を学ぶ」環境は、母親という個人語学教師が、朝から晩までずっと「学習言語」で話しかけるというものです。しかも、それは毎日毎日当該言語を習得するまでずっとです。

ですから、もう一つは、どんな大人でもこの環境下で言語学習を行うことは不可能だという前提です。

だからこそ、大人は「論理性」という赤ちゃんにはない武器を活用して「文法」「語彙」を効率的に吸収して、その基礎の上に赤ちゃんほど長くはないけれど「一定の時間」その言語に触れることで習得するという方法をとることになるのです。

この二つの前提の崩壊を無視して、もっともらしく「赤ちゃんのように語学を学ぶ」ことが言語習得の近道だと主張することは、非常に無責任なことだと思います。

少なくとも、言語教育を生業にする人間はこのことを前提としたうえで、大人の言語教育を考えていかなければならないと思っています。

 

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