身近な英語の「身近」とは
2018年10月31日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「これからの英語教育の話をしよう」から、10テーマをいただいて議論をしていくシリーズですが、今回がいよいよ最終回です。
最終回のテーマはよく日本人が口にする「身近な英語」の「身近」とは何かです。
このトピックは私がランゲッジ・ヴィレッジの運営を通して英語学習者にお伝えしたいことであり、全10回のこのシリーズの最終回にぴったりなものだと考えています。
まずは、なにはともあれ次の引用をお読みください。
「『ちびまるこちゃん』の漫画に、まるちゃんたちが花輪くんに英語を教わる話があります。花輪くんが、『Hello. How are you?』と言ったら、まるちゃんたちは、『もっと、背中かゆいから、ちょっとかいてよとかを教えてよ』と言うんです。花輪くんは『そういうのではなくて、身近な英語から始めるんだよ。』と返すんだけれど、まるちゃんたちは、『私たちにとってはこれが身近なのに』と返す。原作では、これを笑いとして扱っているんですが、『身近な英語』の本質を示唆していると思うんです。」
先述しましたが、私はこの「身近な英語」の本質を様々な方法で伝えるよう努力しています。
「しなやか英語辞典」の公開しかり、「街角英語実況中継学習法」の提案然りです。
前回の記事で取り上げました「英語習得の方程式」である「分かる、繰り返す、使う」に最もフィットするのが、「身近な英語」ですし、結局はどんな専門分野の英語を学習しようとしても、それは「語彙」が専門的なだけであって、言語である以上、形としては「身近な英語」の域を出ることがないのです。
すでにこのブログで何度もお伝えしてきたことですが、私が受講を検討されている方から寄せられる質問で最もがっかりさせられるのが、「『ビジネス英語』は教えてくれないのですか?」というものです。
「ビジネス英語」は「身近な英語」すなわち日常会話に取り込まれる概念で、むしろ日常会話の方が広くて深い領域を持つものだということが理解できていないと、いつまでたっても「英語習得の方程式」である「分かる、繰り返す、使う」の重要性に気付くことができません。
「背中かゆいからちょっとかいてよ」という文章が言える人間は、「この商品高いから別の商品見せてよ」という文章の構造を作ることができないわけがないのです。
後は語彙の問題だけです。
ですから、前者を日常英会話、後者をビジネス英会話と区別することには何の意味もないのです。
むしろ、「ビジネス英語」を意識している方の思考は、「決まり文句」を覚えるフレーズ学習を求めていることであり、そのこと自体が「英語習得の方程式」を理解していないことの証明になってしまうと思います。
「身近」とは言葉の本質そのものであるということを今後も訴えていきたいと思います。