
There is 構文の成立と普及の理由
2025年7月17日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログでご紹介した「英文法は語源から学べ #351」からテーマをいただいて書いてきましたが、第五回目の今回が最終回です。
最終回のテーマは「There is 構文」です。
といってもこのテーマはすでに「There is/areの後にはなぜtheがつかないのか」の記事において、theがつかない理由を
「話者が伝えたい重要な情報や相手にとって初めて耳にする新情報は文末に、という『文末焦点の原則』に照らして不自然に聞こえることを避けたいから」
として確認済みです。
その上で今回は、この「There is 構文」の成立と普及の背景事情について本書の該当部分より要約引用したいと思います。
「There is 構文は新情報の表現に便利だったので使用が広がりました。例えば、新情報 a catを使い、『屋根の上に猫がいる』を表現する場合で考えてみましょう。昔の英語は語順が比較的自由だったので、新情報 a catを文末におくこともできました。しかし、英語が文型(語順)を定着させていくと、文頭にSをどうしても置かなければならない必要ができて来てしまいました。『文頭にS』の性質を優先すると、A cat is on the roof.となってしまいます。しかし、Sであるa catは新情報なので、できるだけ後ろに回したいところです。そこで使われたのが『意味のないThere』です。Sのような機能を果たす『意味のないThere』を文頭にひとまず置くことで、新情報 a catを後ろに回すことが可能になりました。Thereは文頭を埋めるとともに、『後ろに新情報が来るよ』と示すマーカーの役割も果たしています。一方、There is the cat on the roof が不自然に響くのは、旧情報 the catが文の後ろに来ているからです。わざわざThereを使う必然性がないのです。旧情報は前の方におくべきなので、通常通りThe cat is on the roof.と表現します。」
私の主催する「英文法の虎ノ穴」講座では、何よりも「文型」の存在を大切にしており、この「文型」こそが英文法を超短期間のうちに学習完了できる強い味方だとお伝えしています。
ただ、本書のおかげで、英語がこの「文型」を獲得したことによって、このようなデメリットが生じてしまうという事実とともに、それを解消する方法としてのThere is 構文の成立の流れを知ることができて思わず、「なるほど!」と膝を打ってしまいました。
加えて、本書にはこの問題に関連して、英語ではあまり活用されない「受動態」の存在もその解消方法として挙げられていましたので併せて引用します。
「また、受動態も『旧情報→新情報』をコントロールする側面を持っています。What did John break ?→He broke the vase. これはWhatで何を?と聞かれているので、次の文において、the vaseが新情報となります。一方で、Look at this vase.→ It was broken by John . では、Look at the vase.と呼びかけられていることからthe vaseはすでに旧情報になっているので、次の文においては旧情報であるItが先に来て、新情報(知りたい情報)であるby Johnを文の後半に回すことに成功しています。このように、能動態から受動態へ書き換えることによって情報構造をコントロールできるのです。」
このように、本書にはまさに書籍紹介ブログ記事の最後に私が述べた「英文法という名の物語」そのもののような見事な説明がいたるところにちりばめられており、個人的に非常に満足度の高い一冊でありました。









