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シミュレーションかそれともシュミレーションか

2025年5月25日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前々回、前回と「日本語の大疑問」という本を題材に書いてきましたが、今回が最終回です。

私は英語屋の端くれですので、冒頭写真のような「間違い」に遭遇すると、どうしても「simuと綴っているので『シュミ』ではなくて『シミュ』ですよ。」という指摘を入れたくなる衝動に駆られてしまいます。(ですが、家族以外にはそれを抑えます。ということは家族には確実に嫌われています。)

でも、本書を読んでそれは本来的に指摘を入れるべき事柄であるのかどうなのかが分からなくなってきました。

というのも、本書がこの「simulation」の読みに関しても以下のような解説をしていたからです。

*第一回目でのお伝えしましたが、本書を編纂した「国立国語研究所」は、「言語の豊さ」と「言語の正しさ」は全くイコールではなく、正しくなくてもそれが国語の豊かさにつながっているデータを集めることで、国民生活に資することを目的とした機関ですので、一つ一つの質問の回答が実に柔軟性のあるものばかりなのです。

「もちろん正しいのは綴りの通り『シミュレーション』です。しかし、日常生活の中では『シュミ』という発音や表記に接することも少なくなりません。ではなぜこのような音の変化は起こるのでしょうか。話し言葉の中ではある言語表現が本来とは異なる形で発音される場合があります。それが単なる一時的な発音誤りではなく、多くの人によって繰り返し使用される形である場合、それらは『発音のゆれ』と考えられます。『ゆれ』とは、ある一つの言語表現が複数の実現形式を持ち、それらが併存している状態を指します。それらの例として以下を挙げます。

1その場にいた人ゼーインに電話をして(撥音『ん』が長音『ー』に変化)

2大学のジギョーがおわってから     (拗音『ュ』が脱落)

3ユイツ気に入らないっているのが       (連続する同じ母音が単音化)

4家庭のセンタッキで洗うのには           (kやsなどの無声音子音に挟まれた母音が脱落)

5言葉以外のコミニュケーション           (音位転換:前後の音が入れ替わる)

このように発話者が発音を規則的に怠けたり、一定の環境において音の変化が体系的に生じたりすることによって、前述のような『発音のゆれ』が生じるわけです。

しかもこの表のように、実際の発現では正しい発音よりもむしろ『発音のゆれ』バージョンの方が高い割合で使われているケースも多いのです。

simulationは5の(音位転換)に該当し、特にこの場合は別に存在する『趣味』という語の発音に引きずられて(『シミュ』と発音する日本語の単語がないから)、『シュミレーション』と発音してしまったのかもしれません。このようなケースは『類音牽引』と呼ばれます。『日本道路公団』を『日本ロード公団』と言ってしまうような場合もこれにあたります。これは基本的には言い誤りの一種ですが、それでも『新しい』のように、もともと『新たし(あらたし)』だった語が平安時代に起きた音位転間で『新し(あたらし)』と変化し、それが定着した後現在に至るようなケースもあります。」

まあ、simulationが英語の方で転換が起こらない限り、「新しい」のように晴れて「正解」に格上げされることはないとは思いますが、かといって「誤り」目ではなく「ゆれ」にとどまるので、くじらを立てて指摘するようなことでもないという理解に立つことができました。

しかも、(いろいろ探しましたが具体的数値は見つけることができませんでしたが)私の体感的には、少なくとも(コミュニケーション50%:コミニュケーション50%)よりも高い割合で音位転換がみられるような気がします。

 

 

 

 

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