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コトラーのマーケティング3.0

2015年12月2日 CATEGORY - 代表ブログ

コトラー      

 

 

 

 

 

 

     皆さん、こんにちは。 今回ご紹介する書籍は「コトラーのマーケティング3.0」です。 先日、金融機関主催の「マーケティング」セミナーにおいて講師の方が現代のマーケティングを学ぶにはまずはこの本を読まなければ始まらないというくらいに重要ですとおっしゃられていました。 コトラー教授は「マーケティングの神様」と呼ばれており、まさしく「マーケティング」という学問分野を作り出した人と言っても過言ではないと思います。この方の業績をまとめると以上のようになります。

1.マーケティングを体系化して編纂したこと

2.STP(セグメンティング、ターゲッティング、ポジショニング)というフレームワークを提唱したこと

3.ソーシャルマーケティングの分野を確立したこと

現在、84歳になられるコトラー教授はまさに、近代経済の発展に沿って、科学的に「売れる仕組み」の体系化を主導してきた方だということが分かります。「ものを売る」という活動を「気合で売る」という精神論から、「売れる仕組み」の構築という技術論に高めたということです。

コトラー教授の研究の流れは、商売の変遷の流れでもあります。ものが圧倒的に足りない時代には、いかに効率的に生産し、商品を市場に供給するのかというのが、「売れる仕組み」の構築の目的でした。この時代のマーケティングを、もちろん後付けではありますが、マーケティング1.0と呼びます。

そのマーケティング1.0の成功のおかげで、ものが市場にあふれるような時代に入っていくと、「売れる仕組み」の構築の目的は、消費者にどう訴えるのかということになります。ものが豊富にある状態の中では消費者の嗜好は一人一人違ってくるため、製品やサービスも個人に合わせた価値を求められるようになるからです。ここで、上記の 2. STPというフレームワークの登場ということになるわけです。この時代のマーケティング(現在でもこのレベルにとどまっている企業が大半だと言われていますが)をマーケティング2.0と呼びます。

そして、本書によって紹介されているのが、その次に来るマーケティング3.0です。 マーケティング1.0から2.0になり、主役が生産者から消費者に変わったことで、どうしたら消費者にものを買ってもらえるのかを企業が真剣に考えて、商品の情報を企業から消費者に対していかに伝えるかが重要となっていました。ですから、ここに至っても商品やブランドは企業が一方的に作り上げるものにすぎませんでした。

しかし、昨今、それだけでは「売れる仕組み」の構築につながらなくなってしまったのです。いわゆるSNSが一般化することによって、商品やブランドは企業が一方的に作り上げるものではなく、消費者が自発的にネットワーク上であらゆる商品に関する情報をやり取りすることによって作り上げられるようになってきたからです。 つまり、消費者はもはや、企業によってコントロールされる受動的な存在ではなく、自発的に世界をよりよい場所にしようと活動する主体的な存在であるという前提で、「売れる仕組み」を構築していくことになります。

本書は、このマーケティング3.0についての解説本であり、様々な側面からこの新しい考え方について説明してくれているわけで、私はそのマーケティング3.0の内容について、もちろん素晴らしいものと評価しました。 しかし、それよりも、コトラーという一人の学者がその人生において一つの学問体系をここまでつくりあげてしまったという事実が、本書の存在によって改めて明らかになったことに対して非常に強い衝撃を受けました。