「総合診療かかりつけ医」が患者を救う
2022年2月10日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
今回ご紹介する「総合診療かかりつけ医が患者を救う」の著者 菊池大和氏は私の中学・高校の同級生です。
先日、本屋で見覚えのある顔写真付きのとても大きな広告の下に平積みされた新書の著者名のところに彼の名前を見つけ、驚くと同時に買い求めました。
学生時代に切磋琢磨した旧友がそれぞれの分野において目に見える形で社会に貢献しているのを知るのはこれ以上ない発奮材料でもあり、また卒業してからの時間の重さを再認識させられる機会となります。
本書の中で著者は日本の医療について次の二つの問題点をあげています。
① 少子高齢化が進み大都市部に人口が集中してしまっていることから、これまで地方の医療を支えてきた公的な総合病院の多くが経営的に立ち行かず閉鎖を余儀なくされることで圧倒的な地域格差が生じているという問題。
② 夜間や休日には基本的には患者の受入れができないという問題。
そして、この二つの問題の根本原因は医療資源の配分の圧倒的「非効率性」にあるとも指摘しています。
それはどういうことか。
日本の医療体制の構造がこのような非効率性をかかえているのであるならば、それを少しでも改善するために全国に幅広く存在している開業医が「医療の入口」としてまずあらゆる病気やケガの「診断」と「初期治療」にあたり、大方の医療の受け皿となり、そこで重篤だと判断された患者のみを規模の大きい総合病院に送ることで専門的な治療に専念するという形をとることが問題の解決として「当たり前」の手段だと考えられます。
しかし、日本の現実はそうではないというのが著者の主張です。
実際には縦割り医療行政によって開業医は、腰痛は整形外科、咳なら呼吸器科、下痢なら消化器科といったように自分の専門しか見ない医師ばかりになってしまっており、到底「医療の入口」になることができずにその「当たり前」が解決策として実現されていません。
そこで、著者はこの問題の解決方法として、限られた医療資源を有効活用することに自らの人生をささげる決心をしました。具体的にはまず、開業医があらゆる診断と初期治療にあたることができる「かかりつけ医」として機能することの重要性を訴え、また自分自身が、それに加えて夜間でも休日でも困った時にすぐ対応できる「総合診療かかりつけ医」であろうとしています。
彼はこの日本の医療の根深い問題に対して果敢に挑戦するため、神奈川県の医療過疎地(といってもランゲッジ・ヴィレッジよりはずっとお街のようですが 笑)で土日や平日の遅い時間も診療し、救急患者も受け入れる「総合診療かかりつけ医」として頑張っています。
コロナ禍において、この問題に限らず医療における医療資源の非効率性が何度も指摘されているのにもかかわらず、一向に改善されない現実をこれでもかというほど見せつけられてきました。
問題の根本が明らかなのにもかかわらず、変革することから逃げ続けている医療業界や政治にどうしようもない絶望感を味あわされている中でのこの同級生の煌めくような活躍にはまさに「希望」を見せられた思いでした。
私はそんな希望を見せてくれた彼を心から尊敬し応援したいと思います。
そして、彼が望むように一人でも多くの若い医師がその重要性に気づき彼に続いてくれることを願います。