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文学部って何の役に立つの?

2024年2月20日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2024年2月18日)、毎日新聞のウェブ版の「文学部はなぜ必要か」という記事(ただこれは有料記事なので詳細は見られていません)が偶然目に入ってきました。

実は、私も高校時代にこれと似たような失礼な質問を二人の部活の後輩にしたことを思い出しました。

その二人は、結果的にどちらも東京大学の「文学部」に進み、現在も大学で教鞭をとっているのですが、当時からとびぬけて優秀なだけでなく、一人は英文学もうひとりは国文学を学ぶために「文学部」でお気に入りの文豪を研究するんだというはっきりした目標を持っていました。

そんな二人に対して私は、「シェイクスピアや芥川龍之介を学ぶってことはその人より偉くなれないこと確定ってことでしょ?自分が小説家になるのだったらまだしもそれってもったいないじゃん!それなのになぜ文学なの?」という問いかけを頻繁にしていたのです。

今回、このテーマを久々に思い出し、ネットで探したところ、NEWSPICKSのバックナンバーにドンピシャの記事がありましたのでそちらを読んでみることにしました。

この記事で取り上げられているのは、2017年に大阪大学の金水敏文学部長が卒業セレモニーで述べた式辞の内容です。

以下、まずはその内容を要約します。

「みなさま、本日はご卒業・修了まことにおめでとうございます。今は人文学への風当たりが一段と厳しさを増した時期であったとみることが出来るでしょう。税金を投入する国立大学では、イノベーションにつながる理系に重点を置き、文系は私学に任せるべきといった論調が大勢を占める中、文学部で学ぶ哲学・史学・文学・芸術学等の学問を学ぶことの意義は、どのように答えたらよいのでしょうか。皆さんが文学部で学んだ事柄は、職業訓練ではなく、また生命や生活の利便性、社会の維持・管理と直接結びつく物ではない、ということです。しかし、文学部の学問が本領を発揮するのは、人生の岐路に立ったときではないか、と私は考えます。今のこのおめでたい席ではふさわしくない話題かもしれませんが、人生には様々な苦難が必ずやってきます。恋人にふられたとき、仕事に行き詰まったとき、親と意見が合わなかったとき、配偶者と不和になったとき、自分の子供が言うことを聞かなかったとき、親しい人々と死別したとき、長く単調な老後を迎えたとき、自らの死に直面したとき、等々です。その時、文学部で学んだ事柄が、その問題に考える手がかりをきっと与えてくれます。しかも簡単な答えは与えてくれません。ただ、これらの問題を考えている間は、その問題を対象化し、客観的に捉えることができる。それは、その問題から自由でいられる、ということでもあるのです。これは、人間に与えられた究極の自由である、という言い方もできるでしょう。人間が人間として自由であるためには、直面した問題について考え抜くしかない。その考える手がかりを与えてくれるのが、文学部で学ぶさまざまな学問であったというわけです。」

この式辞の最後の部分

「これらの問題を考えている間は、その問題を対象化し、客観的に捉えることができる。それは、その問題から自由でいられる、ということでもあるのです。これは、人間に与えられた究極の自由である、という言い方もできるでしょう。人間が人間として自由であるためには、直面した問題について考え抜くしかない。その考える手がかりを与えてくれるのが、文学部で学ぶさまざまな学問であったというわけです。」

というのが私の高校生の時の二人に対する質問

「自分が小説家になるのだったらまだしもそれってもったいないじゃん!それなのになぜ文学なの?」

に対するドンピシャの回答なのかなと。

「その問題を対象化し、客観的に捉えることができる。それは、その問題から自由でいられるということ」「人間が人間として自由であるためには、直面した問題について考え抜くしかない。その考える手がかりを与えてくれるのが、文学部」

彼らは「シェイクスピア」や「芥川龍之介」の作品もしくは作家自身を対象化し、特定の問題として客観的に捉え、考え抜き、人間を自由にすることを仕事にしているというわけです。

そう、彼らにとっての「シェイクスピア」や「芥川龍之介」は、アーミーにとってのBTSのような「推し」の対象としてではなく、社会問題解決のための材料なのです。

当時の私の「シェイクスピアや芥川龍之介を学ぶってことはその人より偉くなれないこと確定ってことでしょ?」という発言がいかに的外れだったのか、今なら分かるというものです。

このことは、かつて取り上げた「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか」で見た考え方にも通ずるものがあるのかとも思います。

いまさらながら、彼ら二人に対して深くお詫びしたいと思います。

 

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