「漢文不要論」にアメリカ人が物申す
2022年5月4日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
先日(2022年4月28日)のニューズウィーク日本版で非常に興味深い記事を見つけました。
タイトルは、「『漢文は必要ない論』にアメリカ人として物申す」で、執筆者は大人気漫画「ダーリンは外国人」の著者 小栗左多里の夫としても有名な日本語と英語の両言語で記事を書アメリカ人フリージャーナリスト トニー・ラズロ氏です。
本記事における著者の主張を以下にまとめます。
「度々ネットで議論になる漢文不要論。僕自身は、漢文を義務教育で教えることに賛成だが、『返り点不要論』は主張したい。大人向けには、もうひとつ別の提案もある。それは、現代中国語を学習することだ。」
この主張、私も全く同感で、すぐにでもこの方向で教育改革をしてもらいたいと常々思ってきました。
その理由を著者は次のように簡潔に述べられています。
(1)中国語学習は、漢文・古典中国語と同じく日本の教養につながる。
(2)漢文と違って、世界で計11億人が使用する生きた言語を学ぶことになる。
以下に、私が常々考えてきたことをこの二つの著者の理由の解説として書かせていただきます。
まず、(1 中国語学習は、漢文・古典中国語と同じく日本の教養につながる)について。
日本人が古典(日本語)を学ぶことについては、漢文ほど批判する人はいないはずです。
それは日本語は私たち日本人の母国語でその母国語がかつてどのようなものであって、それがどのように現代日本語に形を変えたかを理解することは、決して無駄なことではないと考える人が多いからでしょう。
しかし、日本語にはかつて文字が存在しておらず、4~5世紀になって漢字が日本に入ってきて、それを崩したカタカナ、そしてひらがなが作られ日本語の文字体系ができていったわけで、その意味では中国語を古典日本語と同様に現代日本語の過去の形と考えることもできるというのが、「日本の教養につながる」ということの真意だと思います。
実際に、中国語を学んでみると、改めて日本語自体の理解の深まりを実感することは多く、おそらくこれは欧米人の教養ある人々がすべてのヨーロッパ言語に影響を与えている「ラテン語」を学ぶべきだと考えられているのと同一だと考えられます。
そして、(2 漢文と違って、世界で計11億人が使用する生きた言語を学ぶことになる)について。
とは言え、中国の影響力がアメリカに迫っている現代においては、過去の中国語の文を「レ点」という記号を使って日本語の語順に読み替えて理解するということに時間を使うのではなく、実際に「使える」現代中国語の基礎を学んで、将来中国語が必要となった時に速やかにそれを習得することができる基礎を養っておくということの方が間違いなく合理的だと考えられます。
現代グローバル社会においては、拙速にスキルの部分(実践的学習)だけを与えるのではなく、あくまでも物事の幹や根っこの部分をおろそかにせずに、必要となった時にスキルの部分(実践的学習)を確実にものにすることができるようにするための教育が大切なのだということは、アメリカ人に言われなくても、日本人として当然にして理解しておくべきことだと強く思います。