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集団浅慮

2026年3月27日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

今回ご紹介する「集団浅慮」は、まだ記憶に新しいフジテレビにおける女性アナウンサーがタレント中居正広氏から性暴力被害を受けたことに端を発する一連の騒動を弁護士を中心とした第三者委員会がその事後対応やグループのガバナンスの有効性を調査・検証した「報告書」に基づいて書かれたものです。

報告書を基にしつつフリーのライターである著者が改めて本書のようなビジネス書の形式で出版にしたのは、その報告書が著者曰く衝撃的と言えるまでの客観性と正確性に満ちた「魂の報告書」であり、この393ページに及ぶ濃い内容を世の中により親しみやすい形で紹介し、これをフジテレビ一社の問題ではなく広く社会一般が自分ごととして受け止めるべきだと考えたからだと言います。

著者が「魂の~」とまで強調して本報告書の凄みを取り上げられた以上、報告書自体を読まずとも少なくとも本書を読まずにはいられなくなりました。

報告書によれば、このスキャンダルをここまで大きくしてしまったフジテレビの問題の根幹に「集団浅慮」があったとしているのですが、それがどういうものか、本書に書かれた最新の知見をもとに以下にまとめます。

まずは、この「集団浅慮」という概念を初めて提唱したアメリカの社会心理学者アーヴィング・ジャニスはこれを以下のように定義しています。

「人々が凝集性の高い内集団に深く関与しているとき、メンバーが全員一致を強く求めることによって、他のとりうる行為を現実的に評価するという動機付けを無視してしまうときに人々が引き込まれる思考様式」

そして、ここでいう凝集性の心理的な効果について以下のように補足しています。

「集団凝集性が高いほど、集団はその規範への同調と集団の目標、割り当てられた課題と役割を受け入れさせる力が高くなる。最後に、凝集性の高い集団はメンバーの安心感の源泉となり、不安を減少し、自尊心を高めるのに役立つ」

ここで注意すべきは、一般的には会社組織はその組織目標と達成しようとするとき、むしろ「凝集性の高さ」を最重要目標、つまり好ましいものとしてとらえるものだということです。

特に日本企業は戦後、「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」という仕組みを利用してその課題を全力で達成しようとしてきました。

しかし、それが組織を危険にさらす「集団浅慮」につながってしまう。

この「矛盾」を解き明かすのが本書の最大のポイントです。

では、具体的に凝集性の高い一体感のある組織がどのようにして「集団浅慮」に陥っていくかを見ていきます。

凝集性の高い組織のメンバーたちはその有効的な関係を保つために「インフォーマルな規範」を作り出し、その規範に異を唱える「逸脱者」に対して同調圧力を次のようなステップで加えていくようになります。

①説得 ②疎外 ③排除

つまり、逸脱者が「出る杭」にならないように、まずは「説得」し、それがうまく機能しないとその逸脱者に対するコミュニケーション量を急減させ「疎外」し、最終的には露骨に「排除」に向かいます。

このように「出る杭を打ちきった」組織はつつがなく「集団浅慮」に陥っていくというわけです(その具体例としては実はすでにこのブログの「失敗の本質」で扱った旧日本軍が挙げられます)。

しかも、本書に書かれたフジテレビの経営陣たちの一連の動きを見るに、このような最悪な事態を導いた彼らに悪気があったわけでも、彼らが頭が悪かったわけでもないというこそがこの問題が厄介な点です。

ではどうしたら組織が「集団浅慮」に陥ることから逃れられるのかという解決方法についてですが、それは最後の最後、本書のあとがきで次のように記されていました。

「なぜ『同質性の高い壮年男性』たちは道を誤り、集団浅慮に陥ったのか。彼らは、ただただ『無知』だったのである。人は自らの『知らなさ』を自覚できなくなった時、『知らなさ』を教えてくれる他者が周囲からいなくなったとき、集団浅慮の坂を転がり始める。だからこそ僕は、『知ること』の価値を信じたい。人は一夜にして変わることなどできない。ただし、知ることはできる。そして『知るときが来れば、その人は無知ではなくなる』。価値観のアップデートも、社会の変革も、すべては『無知ではなくなる』ことから始まるのだ。知らないことは恥ではない。知ろうとしない自分を、恥ずべきなのである。そしてすべての他者を『尊重』する姿勢こそが、『知ろうとすること』の第一歩になると僕は思っている。」

とはいえ、「知ろうとしない自分を、恥ずべきなのである。」という言葉は、自らを居心地のいい場所ではなく、居心地の悪い場所をあえて据えることを意味するので、それはそれは簡単なことではないことは確かです。

 

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