日本人と英語

「お世話になってます問題」について

2021年10月19日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の思考法」からテーマをいただいて書いていますが、第六回目のテーマは「対等」についてです。

「お世話になってます」という表現は、日本語を英語に直す時に最も困るフレーズの確実に3位以内には入るであろうキラーフレーズであることは間違いありません。

なぜなら、これは初対面の人にも名刺交換の時に普通に交わされるものだからです。

私は、このシチュエーションで通訳を任されたときは必ず「Nice to see you.」で切り抜けることを決まりにしていますが、それでも毎度のことながら何とも言えない気分になります。

本書では、このキラーフレーズを日本人が(建前として)よく使い、欧米人には全く理解できないということの原因を「英語の思考法」における「個」「つながり」に加えて三つ目の要素である「対等」というタテマエによって以下のように説明されています。

「日本では前の晩にお酒や食事をごちそうになったら翌朝には『昨夜は御馳走様でした』というのが礼儀である。ところが英米文化ではその程度であればその時にお礼をするだけですませ、翌日にまでくどくどと感謝し続けることはない。その場で感謝は済ませ、なるべく早く『対等』に戻ろうとする。それが『タテマエ』であり、礼儀である。この『対等』というタテマエは、英米文化のいろいろな行動を読み解くカギになる。多くの日本人は英米文化では謙遜はしないと思っているが、そんなことはない。自分が褒められすぎて『対等』の均衡状態が過度に破られれば、それを戻すために、例えばI’m glad you said that.などある種の謙遜をする。つまり、日本人は謙遜状態を維持しようとして、常に自己卑下するチャンスをうかがっているのに対して、英米人はまったく謙遜しないわけではなく、対等の均衡状態を常に維持しようする中で、一時的に均衡状態が崩れた場合にさらっと謙遜し、早々に均衡状態に戻ろうとするのだ。」

日本人が初対面でも「お世話になっております」というのは、常に自己卑下するチャンスをうかがっている中での当然の行為であるわけで、そのフレーズ自体に意味はなくても、そのフレーズをタテマエとして言うことに意味があるわけです。

その一方で、英米人にしてみれば、そのフレーズをそのまま「Thank you very much for taking care of me.」とでも訳されようものなら、常に対等の均衡を保ちたいのにもかかわらず、いきなり何の脈略もなくその均衡を崩すためのパンチをお見舞いされ、その均衡を早く「対等」に戻す「義務」を自分の方に押し付けられたかのような感じになり、パニックに陥ってしまうということでしょう。

私たち日本人にとっては、「英語の思考」に関わる「個人」「つながり」「対等」という三つの要素の中ではこの「対等」が最も論理的に理解できるように思えます。