日本人と英語

シャドーイングの目的

2022年9月7日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語学習2.0」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「シャドーイング」についてです。

以前、鳥飼玖美子先生の著作に関連したブログ記事にて、通訳者がトレーニングとして活用する「シャドーイング」を一般の英語学習者のトレーニングにアレンジして適用するケースをご紹介しましたが、今回は英語学習者が「シャドーイング」をトレーニングとして採用する際の目的と方法について詳しく見てみようと思います。

以下に、まずはシャドーイングの目的に関する該当部分を引用します。

「シャドーイングはトライしたものの効果を実感しないままやめてしまう人が多いメソッドであると感じています。その大きな理由は、シャドーイングの目的や方法を明確に理解しないまま、なんとなく始めてしまっていることだと思います。まずその目的ですが、ズバリ『音声知覚の自動化』です。以下丁寧に説明します。リスニングをするときの頭のキャパシティのことを、『脳内ワーキングメモリ』と言います。リスニングをするときは音声知覚と意味理解の処理がこのメモリーを消費しながら英語の音声を理解しようとしています。よくある状態として音声知覚に脳内ワーキングメモリのほとんどを使ってしまい、意味理解に残りわずかなメモリしか使えないというのがあります。英語の音を知覚することに頭が必死で、意味を理解することに頭が使えていないのです。理想的な状態としては、音声知覚にはメモリをほとんど使わず、意味理解に十分なメモリを使っているというものです。日本人が日本語をリスニングしたときはまさにこの状態です。音声知覚の自動化とは、音声知覚に頭を使わなくても音声知覚を完璧にできる状態を作ることです。シャドーイングはこの状態を作ることを目的とするトレーニングです。(一部加筆修正)」

ここで思い出したのが、自動車学校での体験です。

ほとんどの方がそうだと思うのですが、初めて教習車に乗ったとき、何から何まで頭を使わなければできず、車を運転しながらラジオを聞いている世のドライバーはなんてすごい能力を持っているんだろうと思ったものです。

でも、実際に免許を取り、公道での運転に慣れてくると、ラジオどころか聞くだけでなく話すことも必要な携帯通話(昔は禁止されていなかったのです)も当たり前に使えるようになってしまいました。

続いて、シャドーイングの方法に関する該当部分を引用します。

「シャドーイングは英語音声を聞きながらそれと同じ音を少し遅れて発音するトレーニングですが、実行する上でのポイントは次の二つです。①1つの音源を100回以上繰り返す。②自分の音声を録音して確認する。というのも、やり始めるとどんどん次の音源に進みたくなります。しかし、それが英語力向上を阻害する一番の要因です。目的を思い出してください。音声知覚を自動化するということは、1つの音源を余裕でシャドーイングできる状態にすることとほぼ同義です。1つの音源について100~150回程度するのが良いのです。また、その際にイントネーションやアクセントまでも完全にコピーすることを目指して行います。そのために、自分がどの程度コピーできているか録音したものをチェックし、苦手な部分を集中的に練習するのです。これを何度も行うことで徐々に音声知覚が自動化されていくのです。(一部加筆修正)」

本書を通じてひしひしと感じられるのは、「英語の学習」という100年以上も前から存在する様々なメソッドをただ当り前にこなすのではなく、それぞれのメソッドに対してその目的と効果性をとことんまで突き詰めた上でなければ、決して採用しないという著者の「哲学」です。

今回も非常に参考になりました。

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