日本人と英語

単語はじっくり覚えてはいけない

2022年9月7日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語学習2.0」からテーマをいただいて書いてきますが、第一回目のテーマは「英単語の覚え方」です。

私は自らが主宰する「文法講座」のオリエンテーションにおいて、「文法」に関しては、全て講師に全幅の信頼をおいて任せてもらって構わないと宣言をしておりますが、「単語」については、学習者の努力以外どうしようもないものなので、各自の責任においてやっていただくしかないとある意味放置プレイのスタンスをとっています。

(*「文法5泊コース」においては、最低限覚える単語のリストアップ、および単語を構成する「接頭辞」「語根」「接尾辞」の知識の簡単な紹介はします。)

なぜなら、「単語は理屈ではない」ということから仕方のないことだと考えているためです。

しかしながら本書には、単語の性質は「単語は理屈ではない」が、それを記憶する「人間の脳の機能には理屈がある」という視点から「エビングハウスの忘却曲線」という非常に興味深い事実を紹介しながら、効果的な記憶法を提案してくれています。

私も「エビングハウスの忘却曲線」の存在は以前から「知識」としては知っておりましたが、実は本書を読んで私のこの「知識」はそもそも間違って受け取っていたものだったことが分かりました。

まず本題に入る前に、以下本書より引用しながらその間違いについて確認します。

「エビングハウスの忘却曲線について世間でよく知られているのは、忘却率(どのくらい忘れるか)を縦軸に、時間を横軸にとったグラフではないでしょうか?実はドイツ人心理学者ヘルマン・エビングハウスが行ったこの曲線のもととなる実験はこのような『忘却率』を調べたものではありません。まず彼は、『子音・母音・子音』から成り立つ無意味な音節をリストアップして、実験の参加者に覚えさせました。その上で、20分後、1時間、1日と時間を空けてそれらをどれくらいの時間で覚えられるかを調べました。そうすると、1回目には5分かかってようやく覚えられたものが、20分後には2分程度で覚えられました。つまり、3分の節約ができたことになります。この1回目に要した時間と節約できた時間の比率を表したものが節約率で、この節約率を縦軸にとり、時間を横軸にとったのがエビングハウスの忘却曲線です。(一部加筆修正)」

私は、この著者の指摘通り完全に間違ってこの「エビングハウスの忘却曲線」を理解していたのですが、私と同様、ネット上では多くの解説がこのことを誤解したままされていることが分かります。(もしくは単純化するためにあえてそうしている可能性はあります。)

ここで正しい理解に基づいた上で本題に入ります。

本書にて、この「エビングハウスの忘却曲線」に基づく、最も効率的効果的な単語の記憶の仕方を以下のように説明されています。

「図からも分かるように、20分後には節約率が58%だったものが1日後には34%になってしまっています。ようするに、時間が経つにつれて節約率が低くなっていくのです。ちなみに、記憶には短期記憶と長期記憶があり、後者はいつまでたっても忘れません。初恋の思い出はエビングハウスの忘却曲線のようにはなりません。つまり、この曲線は短期記憶についてのみ当てはまるのです。ですから、このことをうまくコントロールすることが英単語の記憶には重要となります。人間の脳には海馬と呼ばれる部分があり、海馬が記憶を司っています。情報が入ってくると、それが長期記憶か短期記憶かを判断し、短期記憶は常に入れ替えながら記憶を整理しています。英単語をすぐに忘れてしまうのは、海馬がそれを短期記憶だと認識してしまうからです。つまり、英単語記憶には、いかに海馬に英単語を長期記憶にするべき大切な情報であると思ってもらえるようにすることが重要だということになります。エビングハウスの忘却曲線を前提にすると、時間がたてばたつほど節約率が減ってしまうので、節約率が高いうちに再度その英単語に触れ、また触れというように、短い期間で何度も同じ単語に出合うことが重要ということになります。そうすれば、その英単語は短期記憶から長期記憶に変わり、初恋の記憶のような非常に忘れがたい記憶になります。(一部加筆修正)」

今まで「単語学習」に関して全くと言っていいほど関心を寄せなかったことを反省し、この正しい「知識」をできる限り指導に活かすようにしたいと思いました。

 

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