シャベルとスコップ
2021年11月4日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「『英語が読める』の9割は誤読」からテーマをいただいて書いていますが、第四回目のテーマは、「シャベルとスコップ」です。
前回までの「和製英語」に関しても言えることですが、日本人は外国の事物を日本に導入する時にもう少し「厳密さ」と「慎重さ」をもってすべきだと思います。
本書においては、その気持ちを強くするべき興味深い事例として、この「シャベルとスコップ」があげられています。
まず、日本語での話ですが、私たちはなんとなくですが、この二つは異なるものとしてそれぞれの特徴を別個にイメージしています。
私のイメージは、シャベルは小さく片手で扱うもの、すなわち「移植ごて」で、スコップは冒頭写真にあるような大きなものです。
この日本人のイメージについて本書には面白い指摘がありましたので、本題とはほとんど関係ありませんが、以下引用します。
「面白いことに、東日本の人は『シャベルは小さく、スコップは大きい』西日本の人は『シャベルは大きく、スコップは小さい』と思っている傾向があるようです。」
私(静岡県富士市出身)のイメージもまさにこの東日本の認識そのものです。
しかし、日本では実際にJIS規格によって以下のようにしっかりと区別がつけられているようです。
シャベル「上部が平らで、足をかける部分があるもの」、スコップは「上部が丸みをおびており、足がかけられないもの」
つまり、刃の上部が「平ら:足をかけられる」か「丸みを帯びている:足がかけられない」かによる区別のようです。
ですから、冒頭写真で言えば、左二つのみがスコップでそれ以外はすべてシャベルということになります。
そうなると、足でかける云々が関係のない小さなものは、そのいずれでもなくあくまでも「移植ごて」と分類されると思われます。
ここでようやく、本題の「日本人は外国の事物を日本に導入する時にもう少し『厳密さ』と『慎重さ』をもってすべきだ」とした私の主張に関する議論に入ります。
そもそも、日本がこの「シャベル」と「スコップ」という二つの外来語を明確な区別もせずに別個のカタカナ語として導入していること自体が、「厳密さ」と「慎重さ」を欠いている証拠です。
しかも、多くの人がこの両方を「英語」から導入したと認識していると思われますが、実は英語は「シャベル(shovel)」であって「スコップ(schop)」はオランダ語だそうです。
もう、何が何だか訳が分かりません。
英語では「シャベル」も「スコップ」も両方とも「shovel」であり、日本の「移植ごて」は「trowel」となるのに対して、日本語ではシャベルとスコップと移植ごては別個の表現とされ、なおかつ、東日本のイメージも西日本でのイメージも、それからJIS規格の定義も全て異なっているわけですから、翻訳家の方々のご苦労は想像を絶することになると思われます。
日本における翻訳がAI化されると日が来るとするならば、その前に必ず外来語の導入に関する「厳密さ」と「慎重さ」の追求がなされてからになるはずです。