
リスニングのトレーニングについて
2024年12月10日 CATEGORY - 日本人と英語
籍紹介ブログにてご紹介した「英語上達完全マップ」からテーマをいただいて書いてきましたが、第六回目の今回が最終回です。
最終回のテーマは「リスニング」です。
私たち日本人は、「英語の聞き取り」という意味で「リスニング」と「ヒアリング」という言葉をかなり無造作にまぜこぜにして使ってしまっています。
そもそも英語のlisteningは自動詞でhearingは他動詞です。
ですので、listeningは目的語を取らず、基本的には方向の前置詞toを伴って意味するのは「耳を~のほうに向けること」である一方、hearingは目的語を伴って意味するのは「~が聞こえること」です。
著者はまず、この二つの違いについてきっちり区別してから「英語の聞き取り」に取り組むべきだとしています。しかも、その際の著者の意味するところは、以下のようにその語義よりもずっと厳密なものとしていますので以下本書より引用します。
リスニングとは、
「『流れてくる』英語を集中して聴き、文法的・構文的に分析にしながら正確に意味を理解すること、すなわち文字ではなく音声によって英語を読むことです。文字と違って一瞬のうちに消え去っていく音声で読むことは、リーディングに比べてはるかに困難です。母語では読めるものはほぼ100%聞き取ることができますが外国語である英語となると2つの間に大きなギャップがあります。リスニングトレーニングの目的はこのギャップを埋めることです。」
ヒアリングとは、
「音声を単に耳に入れること、聞き流すことです。(聞き流し英語の非合理性についてはすでに証明されています。)私は自分の学習体験、指導経験からヒアリングの効果は非常に限定的と考えています。また、ヒアリングは聞き流すだけなので、技術や手順の説明も必要ないものです。」
つまり、「英語の聞き取り」は、「リスニング」という「音声情報のみから構文・意味を分析、理解しながらできるだけ多くの英語を『意識的に』『正確に』受け入れる」トレーニングを通じて行うもので、したがって、本書ではリスニングトレーニングのみを取り上げています。
まず、どこまでの正確さで「リスニング」を取り上げるのかについて著者は以下のように明確にしています。
「リスニングの正確さには二つの段階があります。一つ目は、構文的な分析をせずに耳に残った単語や文末のイントネーションなどの要素を総合して何となく相手の意を推し量る『推測聴き』です。相手の言ったことが騒音などで全文聞き取れなかったり、その時点では力不足だったので部分的にしか聞き取れなかった場合にはそれなりに有効ですが、これを習慣化してしまうとトレーニングにはならないのでお勧めしません。二つ目は、『網掛け聴き』です。トレーニングとしてはこちらを採用していただくものですが、聞き取ったものすべてに網を掛けるようにして把握し、それらに文法・構文の間違いがあった場合にはすべて指摘できるくらいに正確に聞き取ることを目指すものです。」
続いて具体的なトレーニング方法を四段階に分けて明らかにします。
レベル1:耳だけで聴く
繰り返し同じ英文に耳を傾けていると、理解の度合いがだんだんと深まってきます。しかし、ある段階になると、聞き解けない箇所が残るようになります。その原因は構文の複雑な組み合わせであったり、未知の単語であったり、単語の連結音であったりと様々です。このまま続けてもわかる部分を繰り返し理解するという効果はあるものの、リスニングを困難にする要素はそのまま残ってしまいます。ですので、こうなるまで続けたら次のレベル2に進みます。
レベル2:テキストをざっと読んで聴く
テキストにざっと目を通してから聞きます。話の大筋がある程度わかって聞くわけですから、ずっとリスニングがしやすくなります。中にはカンニングのような後ろめたさを感じてこのことに抵抗を示す人もいますが、どうかそんな気持ちは捨ててください。ウェートトレーニングでは、自力でバーベルが上がらなくなったときに補助者に力添えをしてもう数回チャレンジすることで格段に筋力を上げることができるのですが、これはそれと同様の合理的なトレーニングです。
レベル3:テキストを精読して聴く
英文を理解するうえであいまいな点を一切残さないように、使用されている構文、その結合のされ方を必要に応じて時間をかけて分析し、未知の単語は辞書で調べ、完全に解読・消化した後、再びリスニングをすることで理解度をさらに上げます。
レベル4:「加工」して聴く
加工とは以下のことを言います。
①精読したうえでテキストを見ながらリスニングする。
②何度か音読してからリスニングする。
③オーバーラッピング(テキストを見ながら音声に重ねて発声)、それに続けてシャドーイングする。
④リピーティング(音声を一時停止して、スクリプトを見ずに同じ文章を発音)する。
⑤苦手な箇所、フレーズをピックアップして①~④の作業をする。
ただし、この全ステップを順番にすべて実行する必要はなく、自身の理解度を上げるのに必要な作業を必要に応じてやるだけです。
つまり、「音読」のトレーニングとほぼ同じです。
「音読」はほんの少し第三回目の記事の中で言及したが、すでに別の記事をリンクしたにとどめていましたので、具体的な方法としてはこちらを参考にしていただければと思います。