同じ不定冠詞でも同じではない
2017年8月18日 CATEGORY - 日本人と英語
前回は「英語冠詞大講座」から英語の冠詞の性質について考えましたが、今回も引き続きこのテーマについて考えたいと思います。
今回のテーマは、「不定冠詞」です。
不定冠詞は、「話し手と聞き手の間でその名詞について具体的にはイメージが共有されていない(と話し手が思っている)場合」に使用されるものです。
つまり、その名詞が「特定されていない=不特定」場合に使用されるものですが、その場合には2通りのケースがあります。そのポイントは、上記の(と話し手が思っている)というところにあります。
本書では、以下のように二つを定義しています。
1. 聞き手はもちろん、話し手の中でも特定されていない(話し手もどの個体でもよいと思っている)場合
例)I am looking for a pretty cat. My wife likes cats so much.
これは、前者のcatは可愛ければどんなcatであってもいいと思って探しているわけですし、後者のcatsは猫であればなんだってかまわないわけですから。
それに対して、
2. 話し手の中では特定されているが、聞き手には特定されていない場合
例)I am looking for a cat. Did you see a little cat?
これらは、話し手にとっては、明らかに特定されています、逆にその猫が特定されていなければその猫を探せないですから。ですが、聞き手は、話し手に突然話題を振られたわけですから、特定できるわけありません。
しかし、一旦その発言がなされた後には、聞き手の側でもその言及によって特定がなされたとして、定冠詞がつくのです。
Oh, yeah, I saw the cat running to the park.
このように、あくまでも、話し手が聞き手がそれを特定していないと思っている場合に「不定冠詞」を使用するということです。ですから、逆に言えば、「定冠詞」の使用は、聞き手が特定しているという「思い込み」によってなされるということです。
この点については、以前の記事でも、私の祖父の例を出して説明したことがあります。
ちなみに、any(どんな)という言葉は、不定冠詞an に形容詞を作るyがついてできたということです。
このように見てみると、前回の記事では冠詞の難しさは主に「無冠詞」の場合にあると言いましたが、実はもう一つ、この点にもあると私は思います。
以前の記事にて、私は祖父のケースをあげて、田舎のおじいちゃんだから仕方がない的な話をしましたが(笑)、ここには、言葉を話すことの本質が隠れていると思います。
つまり、話し手が聞き手に対していかに「気を使うか」ということです。
聞き手が、話し手である自分の話の筋にどこまでついてきているのかということを常に意識しながら、話をするという「気遣い」。
このことが、ヨーロッパ言語には「冠詞」の使い方に表れているし、日本語には、「あの」「あれ」「その」「それ」といった指示語の使い方にあわられていると思うからです。