二ホン英語に対する評価について
2018年1月5日 CATEGORY - 日本人と英語
三回にわたって「企業・大学はグローバル人材をどう育てるか」からテーマをいただいて書いてきましたが、最終回の今回は「二ホン英語に対する評価」について取り上げたいと思います。
第一回目の「言語と文化」の関係の記事で、英語の国際言語化、すなわち英語を話す人全体の中での英語を母国語として話す人の割合よりも英語を第二言語として話す人の割合の方が圧倒的に多くなって行く中で、文化の主導権が「多国籍文化」に明け渡されつつあるという話をしました。
つまり、英語には「模範解答」は存在せず、英語を話すという時には、常に自分と文脈を共有しないかもしれない相手に話すのだという気遣いが必要になるということです。
ですが、そうは言っても、世界的に通じやすい英語と通じにくい英語というものは存在します。
そして、私たちが話す「二ホン英語」は自分たちでも「通じにくい英語」ととらえられるだろうと思われる方が多いのではないでしょうか。そもそも、「二ホン英語」というカタカナ交じりの書き方からして、自虐的にそれを表しているような気がします。
ですが、本書においては驚くべき「二ホン英語」に対する評価が紹介されていたのです。
以下は、世界の英語の「音声」に対する評価研究の結果です。ご覧の通り、二ホン英語の音声は聞き取りやすさも理解度も75%となり、英語を母国語とするアメリカの英語よりも10~20%上回っています。
国 | 聞き取りやすさ | 理解度 |
スリランカ | 79% | 76% |
インド | 78% | 76% |
日本 | 75% | 75% |
マレーシア | 73% | 76% |
ネパール | 72% | 67% |
韓国 | 68% | 61% |
フィリピン | 61% | 69% |
アメリカ | 55% | 64% |
香港 | 44% | 57% |
まあ、母国語話者であるアメリカ人の英語を外国人が聞いたら、早口に聞こえるでしょうし、自信のない日本人がゆっくり話した英語だからだと思われるかもしれません。
でも、別の調査では、録音された日本人の英語の中から時制、語順、省略といった面で特徴的な日本英語の文を抽出し、アメリカ人を対象に聞き取りやすさを測定していますが、この調査でも聞き取りやすさは8割近くになったようです。
この結果に納得がいかない日本人は多いかもしれません。全然私の英語は通じないよと。(笑)
ですが、私はなんとなくこの結果の意味が分かるような気がします。
私のアメリカ留学時代の経験から、この調査結果のように、日本人の発音や時制、語彙、語順、省略といった文法に関する要素は他の国の英語に決して劣っていないと感じていました。
でも、なぜ多くの日本人がこの結果に違和感を持っているのか。
それは、発音や文法ではなく、文を作って状況や理由を説明する力が圧倒的に劣っているからです。
多くの日本人は、会話をワンセンテンスで終わりにしてしまいます。だから、ちょっとした発音の違いで理解してもらえないとそこで諦めてしまいます。
この調査結果でインドが2位になっているのを「なぜだ?」と感じられた方が多いかと思いますが、その点では、インドの英語がいい例です。
彼らはとにかく相手が分かるまで徹底的にコミュニケーションをつなごうとします。一回言って分からなければ、別の言い方で言い直し、言わなくていいような理由を立て続けに並べ立てます。
「発音」の違いでコミュニケーションが取れないというのは、日本人の「思い込み」です。「発音」だけで言ったら、世界的にもいい方だということをまず理解すべきです。
日本人に足りないのは、文章をつなげて、コンテクストを作り出す力です。
ですから、日本人は、アメリカ人顔負けの帰国子女の英語ではなく、バリバリの「二ホン英語」で文章をつなぎにつなげる人の英語に憧れるようになれば、「英語を使える」ようになる可能性は圧倒的に高まるはずです。
(追記)
拡大円圏の中の英語である日本英語について「日本英語は世界で何番目に魅力的か」という記事にて取り上げました。
こちらはかなり誇張をしているので本当の意味として参考になるか分かりませんが、おまけとしてこちらの動画も載せておきますので是非おなかを抱えて笑ってください。
*22:15~