日本人と英語

地域英語としての自信

2015年8月26日 CATEGORY - 日本人と英語

インド英語

 

 

 

 

 

 

 

 

前回 に引き続いて「日本人英語のすすめ」という本に関して書こうと思います。

私は、自ら開講している「中学三年分の英文法を血肉にする講座」において、日本人の英語の「過去形」の多用について警鐘を鳴らし、その原因が「現在完了形」の意味をしっかり理解していないことであると指摘しています。

ランゲッジ・ヴィレッジで生活をされている日本人の皆さんの英語に聞き耳を立てていると、ほとんどの「過去」にまつわる表現に「過去形」を用いていることに気が付きます。多くの方は、「過去」にまつわる表現なんだから「過去形」で問題ないだろう、と思われるかもしれませんが、ネイティブ講師の英語に聞き耳を立てるとそうではないのです。

では、どう表現しているのかというと、「現在完了形」です。

現在完了形は、「過去の一点における動作の結果が現在に影響を及ぼしていることを同時に表現する方法」です。例えば、I have bought it. は「それ買ったよ。」ということです。この時、過去の一点における動作は「買った」ことです。では、それが現在にどんな影響を及ぼしていることを同時に表現しているのでしょうか?

それは、その発言者の気持ち次第、というかこの発言の前に存在している文脈にもよります。例えば、この発言者をA君とします。B君が、「僕、SMAPのチケット持ってるぜ!お前は?(どうせ持ってないだろ?)」という質問をした結果、A君が「それ買ったよ。」といった場合です。これは、買った結果、現在そのチケットを所有している事実を強調したいはずです。そこには、(バカにするな!)という気持ちさえあるはずです。

それに対して、過去形(I bought it.) は「過去の一点における動作を表現する方法」ですから、買った事実しか伝えられません。つまり、「それ買った。(それ以上、それ以下でもありません。)」という非常に無感情、言ってみればロボット的な表現になります。

だから、ランゲッジ・ヴィレッジのネイティブ講師は、過去形ではなく、現在完了形を多用するのです。(逆に、彼らには日本人が皆ロボットのように感じられるようです。)

このことを非常に強く受講者に伝え、「現在完了」の回では、そのことが当たり前だと思えるまで何度もトレーニングします。そうすると、皆さんの実際のランゲッジ・ヴィレッジでの生活の中でも、だんだん過去形が使われることが減っていきます。

しかし、本書においては、私のこの努力に水を差すような以下のような主張によって、スタンダード英語とはかなり乖離する「インド英語」を擁護する論理が展開されていたのです!(笑)

「インドでは、すべての動詞の6~7割という高い比率で、過去形や現在形の代わりに現在進行形が使用されている。その理由は、インド文化は長い長い「過去」を持っており、過去に生じたことは、再び未来にも生じるだろうし、さらにそれはこの瞬間、つまり現在にも生じようとしているのかもしれない。「時間」「時制」という窮屈な枠に気をとられず、時の過ぎ行くままに流されて、やるべきことを、やるべき時が来たらやる、、、考えてみれば、日々のコミュニケーションの中で、過去・現在・未来の区別はそれほど神経質になるべき程のものでもない。この悠久の精神こそ、インド英語が現在進行形を好む所以なのではないか。」

そんなばかな!と思うと同時に、インド人のように、他人の土俵でも自分の主張を堂々と通すという図々しさを非常にうらやましくも思いました。地域英語としての「インド英語」というものを確立してしまった自信というものを感じます。(笑)

日本人も、地域英語としての「日本人英語」というものを確立すべく、たとえ、それがロボットのように無表情な表現に聞こえたとしても、堂々と「過去形」で通し、何か言われたとしても、「我々は過去形ではなく、現在完了形のつもりで言っていますけど、何か?」と言い切ってしまうような図太さも必要かなと一瞬思いましたが、やはりここは、日本人の謙虚さというものを発揮して、引き続き講義の中では、「現在進行形」の使用を促すことにしたいと思います。