日本語の名詞は全て「物質名詞」
2020年3月4日 CATEGORY - 日本人と英語
前々回より書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の発想・日本語の発想」からテーマをいただいて議論をしていますが、第三回目のテーマは「日本語の名詞の数の性質」についてです。
英語を学習する日本人が最初に厄介だと思うポイントは、名詞に複数形があるものとないものが存在する、すなわちその名詞が「普通名詞」なのか「物質名詞」なのかまでも含めて記憶しなければならないことではないでしょうか。
しかし、一方で、日本語を学習する外国人が最初に厄介だと思うポイントは、洋服は1着、靴は1足、自動車は1台のようにその名詞によって数え方が異なることでしょう。
このように、それぞれの言語にはそれぞれの特徴があり、それが存在しない言語を母語とする人間にとってはそのことを理解するのは当然にして「厄介なこと」になるわけです。
ですが、本書にはこの二つを同じ土俵にのせて考えるという荒業を非常に分かりやすくやってのけている部分がありましたので以下に引用します。
「かつてあるイギリス人が、日本語の名詞を数えることは大変複雑だが、英語でも物質名詞では同じことをしており、日本語の名詞はみな英語の物質名詞のようなものだと思えばいいと述べたが、うまいことを言ったものである。英語の普通名詞はその前にone,two,threeをつければ数を表すことができる。ところが、物質名詞になると、そうはいかない。waterはa glass of waterであり、paperはa sheet of paperとなって、一杯のお水、一枚の紙という日本語とよく似ている。このa glass ofやa sheet ofに相当する言葉を日本語ではほとんどすべての名詞につけていることになるのである。英語では限られた助数詞しかないが、日本語ではこれがたくさんある。 」
いやはや、恐れ入りました。
私たち日本人は、「なぜパンは数えられないのか!」と英語の物質名詞を恨んできましたが、実は日本語の名詞のほとんどすべてが、「数えられない」ものであり、それを助数詞をふんだんに活用しながら無理やり数えていたにすぎなかったのではないか!
このことに、今まで日本人を40年以上続けてきてようやく気付いて、非常に大きなショックを受けています。(笑)
そして、本書はこうも続けています。
「日本人もそれをだんだん使いこなせなくなってきて、すべて『個』で済ます傾向が表れた。しまいには、『10の都市で選挙が行われます。』という具合にまでなってきている。これだと、10 citiesにより近く、それだけに日本語の語感から外れるような気がする。日本語でも、英語の物質名詞的な形から普通名詞の数え方へ移行しようとしているのだと考えることができる。」
このような日本語の変化(劣化?)と引き換えに、私自身「普通名詞」と「物質名詞」の本質的理解により近づけたという事実に、非常に複雑な感情を抱かせるざるを得ませんでした。