
なぜ楽天は英語公用語化に成功したか
2018年4月11日 CATEGORY - 日本人と英語
前回代表ブログにて書きました「問題児 三木谷浩史の育ち方」の中に、楽天の英語社内公用語化について言及されていましたので、その部分について少しご紹介したいと思います。
楽天が社内公用語を英語に定めるとしたのは2010年のことです。
今でもはっきり覚えていますが、その時多くの企業人が「ばかばかしい」「非現実的だ」という評価を下しました。
そして、それは実現性に乏しいということだけではなく、仮に実現が可能だったとしても逆にそれによって生産性が下がるという指摘も多かったように思います。
英語教育をビジネスとしている私自身も、正直「やりすぎではないか」という印象を持ったくらいです。
しかし、楽天はそのような批判をものともせずこのプロジェクトをやりぬき、今ではグローバル企業としてその恩恵を最大限に享受しています。
当時この楽天の決定に追随した企業がいくつもあったかと記憶していますが、楽天のように当たり前のようにそれを実現したという話を聞いていません。
なぜ、楽天にはできて他の企業にはできないのか。その理由が本書を読むことによって分かったような気がします。
まず一つ目の理由ですが、楽天が英語を公用語にするというプロジェクトはそれ自体が「目的」ではなく、楽天の成長を継続するにあたっては必ず採らねばならない「手法」であったということです。
彼らは、IT企業として安定的に成長するためには、市場を日本国内に限定することも、日本人の中からのみ人材を採用するということも、どちらも選択することはできないと早い段階で認識していました。
つまりそれは、企業として存続するのをやめるか、英語化するかのどちらかだという切迫した問題ととらえていたということだと思います。
そして二つ目の理由は、その手法を最も効率的、効果的にとるために自己分析から目標管理まで必要なことをあらかじめ考え抜いていたということです。
当初楽天は、社員に対してTOEIC800点という明確な数値目標を課しました。しかも、その数値を昇進の基準として使うという徹底ぶりでした。
当初私は、この方法についてこのブログでも批判的に書いたこともあります。日本人が英語を使えるようになるためには、TOEICの点数を高めるための学習という方法が効果的ではないと考えているからです。
TOEICの点数の向上には英語の能力とは別の試験受験テクニックのような力が必要となりますし、グローバル化に最も必要なスピーキングの能力を測定するには適していません。
三木谷社長ともあろう方がそんなことも分からないのかと疑問に思ったこともありました。しかし、彼はそんなことは百も承知でそれを実行していたのです。
楽天のように何百人もの社員の英語力を一斉に一定水準まで向上させるためには、明確な数値管理が必要だということ、そしてその方向性はどうであれ、短期間のうちにTOEIC800まで到達させれば、後はその基礎力を活用して何とか実戦で使っていくことによってスピーキング力は向上していくはずだという確信があったようです。
しかもそれは、楽天という会社が一定水準以上の能力を持つ人材で構成され、三木谷社長という本質を理解した強力な推進力を持つリーダーによって率いられているという前提をもとに「やり切る」集団であるという自己分析に基づく確信だったはずです。
実際に、楽天はその手法を目的の実現につなげることに成功しました。しかも、おそらく三木谷社長の計画通りのスピードで。
ですから、三木谷社長にこの方法を日本国内の楽天以外の集団に対しても同じようにとることで実現できるか?という質問をしたとしたらなんとお答えになるか非常に興味があります。
私としてはそれは難しいとお答えになるのではと考えたいと思います。(笑)
私は三木谷社長が楽天で実現したことを別の企業に対して実現するように仕向けることこそランゲッジ・ヴィレッジの使命であると考えます。
そして、ランゲッジ・ヴィレッジはそのことに日本で最も長けた場所であるとの自負を持ち続けてまいります。