日本人と英語

「しなやか英語」と「ごつごつ英語」の研究

2017年8月9日 CATEGORY - 日本人と英語

前々回、前回と「英語語彙大講座」から英語の語彙の性質について考えました。

今回も引き続きそのことについて考えるのですが、少し前置きをさせてください。

私は、自著の中でもウェブサイトの中でも、「しなやか英語」と「ごつごつ英語」の存在について、日本人の従来の学習が、後者に偏っていて、非常にアンバランスな状態であることを指摘してきました。

具体的には、自分自身のアメリカ留学時代の苦い経験として、英語がスムーズに出てこない留学初期の段階から、「入ってもいいですか?」ということを言いたいときに、「May I enter?」という表現をしがちで、相手に「Yes, you may come in.」と言い返され、「May I get in?」という、もっと自然で「しなやか」な表現を使わなかった(使えなかった)ことに恥ずかしさを感じる経験について書きました。

「get in」と「enter」では、前者のほうが「しなやか」で後者は「ごつごつ」な表現であり、落ち着いて考えれば、仲間内の会話では、前者で言ったほうが明らかに自然なのにどうしても後者で言ってしまいがちになってしまっていました。

この現象は実は私だけではなく、多くの日本人留学生にも共感してもらえる傾向でした。

自著の中で私はこの原因が、日本の英語教育が「入る=enter」という一対一の対訳で語彙を覚えさせられていることだと一応の分析をしています。

そして、「しなやか英語」と「ごつごつ英語」について、前者を「構成語」、後者を「整理語」という形で自分なりに分類整理してきました。

すなわち、整理語「enter」は構成語である「get」と「 in」に分解できるという考え方です。

この分類は自分としても悪くない分類だと今でも思っているのですが、本書において、それぞれの存在についてのルーツについての説明があり、私の「しなやか英語」と「ごつごつ英語」の概念に「整理語」と「構成語」と合わせて明確な根拠を与えられると思いましたので共有します。

そもそも、英語の語彙が多い理由は、ブリテン島が様々な民族に支配されたことによって、アングロサクソンの言葉をベースにはするものの、様々な言語の影響を受け、それらの語彙も取り込んだことだという説明をしました。

特に、フランス人(ノルマンディー公)によって征服された時には、王族貴族などの上流階級はフランス語を使用し、一般庶民はアングロサクソンの言葉を使用するという二重言語構造を経験しています。

その後、ブリテン島はフランス人の征服から脱却し、再びアングロサクソンのものとなり、国語もアングロサクソンの言葉、すなわち英語に戻りますが、フランス語の語彙もその多くを取り込みました。

その結果、従来からのアングロサクソン語由来の言葉が「しなやか英語」で、このとき取り込んだフランス語由来の言葉が「ごつごつ英語」という具合になったというわけです。

このような背景があることから、いまでも「ごつごつ英語」は、なんとなくインテリっぽくてかっこいい感じがするのと同時に、使い方によってはキザで「キモイ」ととられる危険もあると思います。

日本語で言えば、「それはデフォルトがマストでしょ。」とか、「それは既定用法が不可避でしょ。」みたいな感じでしょうか。

例えば、「もともとのやり方でやらなきゃ。」というほうが普通の会話の中では自然のはずです。

私の留学時代の場合で言えば、全然スムーズに会話ができない日本人が、ホームパーティーに誘ってくれた家の玄関で、「こちら進入していいですか?」みたいなことを言ったようなものですから、あきらかにそれは変ですよね。

このような私の問題意識に正確な説明を加えることができる「しなやか英語」と「ごつごつ英語」の由来についての知識を本書のこの説明によって得ることができたことは大きな収穫でした。