英語教育と教員資格の問題について
2014年11月16日 CATEGORY - 日本人と英語
先日、書籍紹介ブログにて「英語教育はなぜ間違うのか」をご紹介しました。
「国際化とは何か」というマインドセットの部分で非常に参考になる良書でしたが、一点、著者と私で考えが異なる部分がありました。今回はこの部分について考えてみたいと思います。
著者は本書の中で日本のALTの採用に関するJETプログラムを批判する中で以下のような発言をされています。
「無資格、無経験のネイティブスピーカーは、語学教師として何ほどの役にも立たない。役に立つとしたら、単なるインフォーマント(テープレコーダー)としての役割だけだ。」(一部加筆修正)
皆さんはご存じだと思いますが、ランゲッジ・ヴィレッジの講師採用基準はホームページにて明らかにしています。具体的な書類審査要件としては外国人講師には入国管理局が定める就労ビザの要件(大学卒業資格)のみです。
こちら をご確認ください。このページから私たちLVのこの件に関する考えを以下に抜粋します。
「ランゲッジ・ヴィレッジの講師採用基準は就労ビザが発給されるために必要な大学卒業資格のみにあえて限定しています。なぜなら、LVで働くためには教員資格の有無とは全く関連のない能力を必要とし、その能力を持っている人間を優先的に採用したいと考えているので、それ以外の条件で門戸を狭めたくないからです。講師に最も求められる能力、それは極端に「人間好き」「コミュニケーション好き」という性質です。」
続いて、
「想像してみてください。『一年を通じて日本人と朝から晩まで、授業、食事、休憩を問わず、生活を共にする』ということは、彼等が極端に『人好き』の性質を有していなければ出来ないことです。逆に言えば、この性質(能力)を有していなければ、三日とこの環境に耐えることはできないでしょう。もちろん、入社後には徹底的にLVのコンセプトを理解し、自らレッスンのデザインができるまでトレーニングされます。そして、毎日この労働環境の中で実践を重ねることで経験値はすぐに上がっていきます。その結果、LVの最大の魅力である『講師力』を有する講師ばかりとなるのです。」
本書において、著者がALTの制度自体を批判することについては理解できます。なぜならば、日本の教育行政には、彼らをどのように活用するかという戦略が全くないからです。しかも、外国人に対する労務管理など、まったく想定していなかった現場の日本人教師に丸投げですから、彼らALTに対してまともな研修や指導などできるはずもありません。
その結果、ALT制度は、著者のいうように大学を卒業したばかりのネイティブスピーカーにとって「お手軽な小遣い稼ぎ」のオプションになってしまっています。
しかし、だからと言って「無資格、無経験のネイティブスピーカーは、語学教師として何ほどの役にも立たない。」というのは、まったく当たらないと考えます。
なぜなら、著者のこの発言は日本の英語教育の仕組みを考慮していないと思われるからです。
私たちLVは、日本の学校教育において行われている(これは過去形になりつつありますが)「机上のお勉強」という性格の強い英語教育それ自体は間違っていないと考えています。
そこには、体系的な指導、効率的な指導が何よりも重要であって、外国語習得という実技的教科ではあるけれども、他の教科と同様の性質を有すると考えられます。
したがって、その指導に当たるものには「教員資格」を求めるのは方向性として理解できます。ですから、この段階では日本人の英語教師の対応で十分で何も無理をして無意味なALT制度を強行する必要性などありません。
それに対して、学校教育を終えたものがいわゆる「実用英語」すなわち英語を使えるようにするという目的をもって英語を学ぶ段階では、それはもはや「机上のお勉強」ではなく、「英語を使う環境の提供」ということが重要だと考えられます。(しかし、この段階については公教育では現在のところ対応することはできません。だからこそ、LVの存在価値があるのだと思っています。)
つまり、ここの段階では「学科」ではなく、「実技」をできるだけ多くこなすということです。
この考えにのっとれば、何よりも優先して実現すべきは「圧倒的な英語に触れる時間」です。
そこで「教員資格」云々を持ち出すことが、どれほど益が少なく、障害を作り出すことになるかということです。
彼らネイティブスピーカーに必要とされることは、「教員資格」ではなく圧倒的長時間にわたり英語能力が不十分な日本人に根気強く寄り添い対応することができる「人間力」です。それから、日本人の英語特有の性質、具体的には文法や語彙の基礎は比較的できているが、それをコミュニケーションにつなげた経験が極端に少ないといったことを理解することです。
このことは、長時間日本人英語学習者に接すれば自然に理解されることなので、彼らの採用時に見定めるべきは「人間力」ただそれだけと言っても過言ではありません。
この点については、私たちランゲッジ・ヴィレッジは経験に即して自信をもって主張する資格があると思っています。