日本人と英語

英語脳と日本語脳の切り替え

2016年10月16日 CATEGORY - 日本人と英語

Korean woman turning off light switch

前回、前々回に引き続き、茂木健一郎氏の著書「最強英語脳を作る」からテーマを取り上げたいと思います。

今回は、「英語脳と日本語脳の切り替え」です。

日本人が英語を学ぶにあたっての目標はいろいろ考えられますが、最終的に「アメリカ人になる」ということを目標にされる方は少ないと思います。つまり、あくまでも日本人として英語を使えるようにし、日本語、英語の切り替えをしっかり行えるようにすることを最終目的にする方が多いはずです。

このときの英語を話すために使用する回路を「英語脳」、日本語を話すために使用する回路を「日本語脳」と言ったりしますが、その切り替えについて著者は非常に面白い指摘をされていましたのでご紹介したいと思います。

そもそも、その切り替えを上手にできる人のことを「バイリンガルである」と表現しますが、このことを可能にしているのが脳の中心にある尾状核と呼ばれる脳の他の器官と結合している器官です。

尾状核

この器官の機能として私たちの生活感覚の中で理解できるものとしては、車の運転です。

左側通行の日本での運転になれている日本人が、アメリカに行って運転すると右折はそのまま近い方に行けばよいのですが、左折する時、左のレーン(対向車線)に入ってしまいがちです。ただ、これは運転をしていれば慣れていくものです。

ところが、日本に帰ってくると、今度は逆に右側通行になれているから、逆のことが起こってくるのです。

私も、実際にこの問題に直面しました。自分以外の車がたくさん流れているときには、あまり問題にならないのですが、自分だけが走っている交差点などでは、特に顕著に生じる問題です。

ですが、アメリカでの運転と日本での運転を頻繁に繰り返していると、脳が瞬時に右側通行と左側通行とを切り替えることができるようになります。そして、これがまさにこの尾状核の働きによるもののようです。

まさに、バイリンガルという状態は、このことと同様のことと捉えられるのですが、これは何も言語の問題だけではなく、社会習慣的な問題にも言えることです。例えば、初対面の人と握手するとか、ハグするとか、ファーストネームで呼ぶとか、これらの言語外のコミュニケーション習慣の切り替えについてもこの器官が絡んできます。

ですから、外国帰りでカブレている人は、相手に名刺を渡しながら、ペコペコ頭を下げ、「あっ、どうもすみません」などとお辞儀をしたりすることをしたがらない人がいますが、本当に英語、英語文化と日本語、日本語文化との切り替えが尾状核のレベルでできるようになっている人は、アメリカではアメリカ式で、日本では日本式でコミュニケーションが取れるわけです。

後者のようにするのが、日本人としての英語、英語文化への付き合い方としての最終目的なんじゃないかと思いました。

いくら、今後の世界が英語をスタンダードとして回っていくようなものとなったとしても、日本人が英語を学ぶということの最終目的を「アメリカ人になること」に設定するのではなく、あくまでも、日本人として英語を使い、日本語と英語の切り替えをしっかりすることで、英語文明にはないマイナーだけれども、キラリと光る価値を提供することができる人材を目指すべきだと改めて確信しました。