「否定」は日本人が誤訳しやすい項目No1
2021年11月7日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「日本人なら必ず誤訳する英文」からテーマをいただいて書いていきますが、第一回目のテーマは「日本人が最も誤訳しやすい文法項目」です。
著者によるとそれは「否定(省略文)」だそうです。
本書の優れた点として、このような漠然とした課題について、「構造の基本理解」を確認した上で、そのバリエーションを増やしても理解できることを確認する方法があげられます。
以下、実際に見てみましょう。
例文を4つ見てそれぞれの意味を考えてみてください。
(1)This is mine. Not yours.
(2)I don’t feel like talking to him. Not today.
(3)I feel like talking to him. Not yesterday.
(4)She didn’t have an umbrella. Not when it was raining.
まず、(1)が分からない人はいないことをまず確認します。
そして、(2)も大方大丈夫そうですが、これが大丈夫ということをきちんと構造的に説明できないのであればそれは、運がよければ正しく読め、運が悪ければ誤読をするという綱渡りをこれまで続けてきたということの証拠だと著者は言います。
では以下に「否定」の構造の基本を確認します。
「日本語では否定文は原則として文末に『ない』をつければ、それだけでことが足ります。ところが、英語はそういう構造の言語ではありません。原則として動詞の前(be 動詞の場合は後)にnotをつけて文全体の意味をひっくり返すのが英語の否定表現です。だから、何でもかんでも日本語流にお尻に『ない』をつけようとすれば、うまくいくときといかない時がでてきてしまうのです。」
その前提を見てみましょう。
(1)のNot yours .を完全な文に直すと、This is not yours.となります。つまり、ただ単にくどくなるから省略しただけであり、それは日本語流にも当てはまり、問題ありません。
続いて、(2)も同じように、完全な文に直すと、I don’t feel like talking to him. I don’t feel like talking to him today.「私は彼と話す気分じゃない。今日は話す気分じゃない」であり、これも(1)同様、必要最小限の語だけを残して省略していただけです。
この二つは当たり前のパターンではありますが、二回やることによって、英語の「否定」の構造が理解できました。
(3)からは「うっ」となる割合が格段に増えると思いますが、同じようにやってみましょう。
I feel like talking to him. I didn’t feel like talking to him yesterday.「私は彼と話したい気分だ。(でも)昨日はそうじゃなかった。」
前文が肯定文であることと、後文の時制が過去になっていますが、基本構造は一緒とすれば、当然これしかないわけです。
(4)になると正直言って、私自身完全に「うっ」となってしまいましたが、同じようにやってみました。
She didn’t have an umbrella. She didn’t have an umbrella when it was raining.(彼女は傘を持っていなかった。雨がふっていたのに持っていなかった。)
簡単にできてしまいました。
つまり、二つ目の文で「She didn’t have an umbrella 」が省略されているということは、一つ目の文と同じでくどくなるから省略しただけです。
ですから、その構造の部分に二つ目のnotをぶつけてあげるということを素直に堂々とやってあげるだけで、「日本人が最も誤訳しやすい文法項目」という最大の難所を克服できてしまうわけです。
たったこれだけのことですが、いろいろ頭の中でこねくり回して、結局「行き当たりばったり」を繰り返すという無限ループから抜け出すことができそうです。
ただ、こう言ったものもありますので注意は必要です。
I don’t just like her.とI just don’t like her.
前者の副詞justは動詞likeの直前にあるので、このlikeを飾っているということが分かるので、「ただ好き」であり、それをnotで否定しているので、「ただ好きなだけじゃない」となります。
一方後者は副詞justがdon’t likeの直前にあるので、「好きではない」を飾っているということになるので「ただ好きではないんだ」となります。
これも副詞が何を修飾しているのかという視点でしっかり把握しておけば大丈夫でしょう。
ただ、上の場合は副詞もしくは副詞句がnot を含んだ動詞を飾っているのかどうなのか分かりやすいですが、次のような場合にはそれは分かりにくくなります。
You should not buy new clothes because they are cheap.
意味をしっかり考えれば、becauseの副詞句はbuyを飾っており、「安いから買う」ということをすべきではないということになります。
構造上では分かりにくく、もしかするとshould not buyを飾っている可能性もあると考えてしまう可能性があります。そういった場合は、becauseの前にjustやonlyをつけることによってその区別が分かりやすくなります。
こちらは、読む人の能力というよりも、言う(書く)の丁寧さが問われると思われます。