外国語学習の適正年齢とは
2018年8月19日 CATEGORY - 日本人と英語
前々回、前回と「TOEIC亡国論」からテーマをいただいて書いていますが、三回目の今回は「外国語学習の学習に最適な年齢」について考えてみたいと思います。
「外国語学習」と「年齢」なんて議論する余地もないだろうという声が聞こえてきそうですが、本書にはおそらくその多くの声を完全に覆す驚きの結論が示されていました。
それは、「言語性の知能は60代に最高値に達する」というものです。
この結論は、アメリカの心理学者J-ホーンらの加齢に伴う知能の変化の研究結果から導き出されました。
この研究では、短期的な記憶力や集中力は、私たちが一般的に考えるように20歳を過ぎると低下傾向にあるのに対し、判断力、経験知、応用力は20歳から上昇傾向に転じ60代でピークに達するようです。
この結果得られたデータをもとに英語力を測定する6つの要素(語彙力、読解力、文法力、リスニング力、スピーキング力、作文力)の習得最適年齢を著者が考察した結果が以下です。
◆語彙力: 単純な語彙については圧倒的に20代が有利だが、複雑で相互関連性があるような概念語彙については、判断力、経験知、応用力がピークに達する60代が有利となる。
◆読解力: 集中力を要する長文読解や口語、俗語が多いシナリオのような会話体の文章では20代が有利だが、ニュースやコラムを読んで概要を把握するような場合は、判断力、経験知に長けた60代が有利となる。
◆文法力: 暗記レベルの文法問題では、記憶力に勝る20代が有利だが、文章を組み立てる仕組という意味での文法力については、論理的思考力の高い60代が有利となる。
◆リスニング力: 加齢とともに聴力そのものが減退するため基本的には20代が有利である。
最後に、スピーキング力と作文力についてだが、この二つは同一視してよい。なぜなら、英語での発話とは英作文を瞬時に行う頭脳作業だからである。
◆スピーキング力と作文力: これらの能力の年代による違いは他の能力と比べて判別しにくい。それは、この能力が他の様々な能力の総合力とでも言うべき能力であるためだ。そう考えると、これらの能力については明確な有利不利を判断することができない。
このように見てくると、いわゆる知的活動における短期的な記憶力や集中力というのはかなり限定的な重要性しか占めていないと考えられます。
それよりも、各能力を必要に応じて関連させながら問題解決をしていくという「統合力」が重要のようです。
そういった意味では、少なくとも壮年者が、「もう年だから若い人のようにはいかない」などというような言い訳によって、学習から自らを遠ざけるという態度は決してとるべきではありません。
むしろ、「60の手習い」というは、積極的に何かを身に付けるのに最も適した年齢が60歳であるという意味の積極的な示唆を意図した言葉という認識を持つべきではないでしょうか。