日本人と英語

子音の分類

2026年4月16日 CATEGORY - 日本人と英語

英語関連書籍ではありませんが、慶應大学の川原教授の「『あ』は「『い』より大きい!?」をご紹介しました。

著者は「音声学」を専門とされる言語学者で、本書には「子音」に関する整理が非常に上手にされていましたのでその点について今回このブログにおいて取り上げることとしました。

というのも、今まで私が主宰する「文法講座」の「発音記号」に関する講座において、シンプルに説明することを何よりも重要視するがゆえに(しかも文法ではなく発音という別分野をざっくりと説明するため)、かなり意識的に「厳密さ」を犠牲にしている部分があったのですが、実はずっとそのことが気になっており、「発音」においても正確なことを知りたいと思った方には正確な知識を得られる機会を設けたいと思っていたからです。

その「厳密さ」を犠牲にしている部分とは、

「日本語の発音は、母音単体、もしくは無声(声帯が振動しない)音である子音と有声(声帯が振動する)音である母音が必ずセットでしか存在しない言語であるのに対して、英語の発音は子音単体でも存在しうる言語です。」

というものです。

現実には、母音は全て有声音であることは間違いないのですが、子音には「無声子音」と「有声子音」の両方が存在しているので、「無声(声帯が振動しない)音である子音」という説明は誤りなのです。

ではなぜそのような誤った説明を意識的にしているのか、それは母音を発音する時には声帯の振動が大きく、発生する時に喉に手を当てれば必ずその振動を感じることができるのですが、有声子音を発音する時には声帯の振動は母音と比べて圧倒的に小さいので、説明時に喉に手を当てさせてもその振動を感じてもらえる可能性が低いこと、またその時に「子音は母音と違って有声子音と無声子音の両方があって~」という説明をすることが、日本語と英語の発音の違いの説明をぼやかせてしまうことになると考えているからです。

実際、母音の発音の時の振動を感じる体験と、子音の発音の時の振動を感じない体験をして、納得されない受講生は今まで皆無で、ほとんどすべての方に日本語と英語の発音の違いの本質を即座に理解してもらうことができています。

では、そのような制約を排除することができた場合、「子音」について本来的にはどのような説明をするべきなのか、以下に本書の該当部分、およびそれを参考にした他の資料からの知識を要約の上、まとめてみたいと思います。

基本的に子音は以下の4つの観点からの分類が可能です。

①有声音か無声音かによる

②調音法(音の出し方)による

③調音点(音を出す場所)による

④阻害音か共鳴音かによる

まずは①「有声音」か「無声音」かによる分類について

有声子音:[b][d][g][v][z][l][r][j][m][n][ð̟][w]

無声子音:[p][t][k][f][s][ʃ][h][tʃ][θ̟]

こちらはすでに説明済みですが、有声音は声帯が振動する音で無声音は声帯が振動しない音です。母音は明確に振動しますが、子音の場合は有声子音であってもそれは相対的に弱いものです。なぜなら、母音の発音は、口腔内で空気の流れが妨げられず、声帯振動(声)がそのまま口から出ますが、有声子音の発音は、口の中(唇、舌、歯)で空気の通り道が狭められたり一度閉じられたりするため、結果として母音に比べて振動の強さや継続時間が短くなる傾向があるからです。

 

②調音法(音の出し方)による分類について

1.破裂音(閉鎖音)

調音器官を閉鎖して呼気を止めたのち、急に開放して発する音。[p][t][k][b][d][ɡ]がある。

2.摩擦音

肺から口腔を通って出る呼気が、声門・咽頭・口腔内の調音器官のどこかで狭められて生じる音。[s][ʃ][z][ʒ]など。

3.破擦音

破裂音(閉鎖音)にすぐ続いて摩擦音が発音され、一つの単音とみなされるもの。[ts][tʃ][dʒ][dz]など。

4.鼻音

呼気が鼻腔を通り、鼻腔の共鳴を伴う子音。例えば口腔を両唇で閉鎖する[m]、舌先を歯茎につけて閉鎖する[n]、後舌を軟口蓋につけて閉鎖する[ŋ]の3種類。

5.流音

舌先を上顎うわあごに近づけ、その中間または両側から気息を通して発する子音。[l][r]など。

6.わたり音(半母音)

調音の仕方が[i][u]に近い子音。[j],[w]のように,舌の位置の低い,子音から母音へ移行(わたり)するような滑らかで持続性のない短い音で接近音ともいう。

 

③調音点(音を出す場所)による分類について

1.両唇音

上下の唇を接触、または接近させることにより、呼気の通路を変化させて発する音。[p][b][m][w]など。

2.唇歯音

上の前歯と下唇とを接して調音する音。[f][v]の二種類。

3.歯間音

舌の先端を上下の前歯の間に挟んで発音する音。[θ̟][ð̟]の二種類。

4.歯茎音

舌先 と上の歯茎とで調音される音。英語の[t][d][n]など。

5.硬口蓋音

舌の中央部(前舌面)を上あごの硬い部分(硬口蓋)に近づけたり、押し当てたりして調音される子音。[j]の音。

6.歯茎硬口蓋音

歯茎音よりも舌が丸まり、硬口蓋よりの少し奥に位置して上顎との間に隙間を作り(摩擦音)、または一度閉鎖して空気を抜く(破擦音)ことで作る音。[ʃ][ʒ][ʧ ][ʤ]。

7.軟口蓋音

舌の最も奥の部分と軟口蓋との間で調音される音。[k][g][ŋ]など。

8. 声門音

左右両声帯の間で調音される音。[h][w]など。喉頭音とも。

 

最後に、④「阻害音」か「共鳴音」かによる分類について

阻害音:口の中の気流を完全に、または部分的に遮断して発音される音。つまり、破裂音・摩擦音・破擦音などの子音のみで、「硬い」「鋭い」印象のある音。

共鳴音: [m][n][r][j][w]などの子音および、すべての母音で、「柔らかい」「ふんわり」した印象のある音。

この区別は、実は以下のように捉えると日本人には分かりやすいものです。

阻害音は「濁点をつけられるもの、もしくは濁点がついているもの」で、共鳴音は「そもそも濁点すらつけられないもの」。

このように、「子音」については、できる限りシンプルにまとめたとしても短時間では納得のいく説明をすることができないので、改めて私の文法講座における指導戦略は間違っていなかったと再確認することができました。

 

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