日本人と英語

There is/areの後にはなぜtheがつかないのか

2019年9月1日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の新常識」よりテーマをいただいて、書いてきましたが、第五回目、最終回のテーマは「There is/areの後にはなぜtheがつかないのか」です。

「There is a cat under my car.」

このThere is / There are 構文は文法知識ではどうにも説明しきれないもので、「中学三年分の英文法を血肉にする講座」では、「特別講座」の慣用句編にてご紹介するにとどめています。

そもそも、Thereというのは、「そこで」という副詞ですから、本来主語の位置に来ることはないはずのものです。ですから、とりあえず主語の位置におかれている形式上の主語と言われるもので、本来の主語、すなわち意味上の主語はbe動詞の後にある a catです。

ではなぜ、thereという副詞をわざわざ文法ルールを無視してまで、主語の位置にもってきているのか。それを文法的にうまく説明できないために、私は「特別講座」の慣用句編に収録してきたのであって、その理屈付けを今まであきらめてきたことになります。

しかしながら、本書ではその理屈を次のように見事に説明してくれていました。

「そもそも、文法ルール通り、伝えたいものを表す名詞をそのまま主語の位置に持ってくればいいのではないでしょうか。この文章であれば、A cat is under my car.のように。もちろん、文法ルールに従っているわけですから、文法的に問題はありませんが、この文だけだとかなり不自然になってしまいます。それは伝える相手にとって新しい情報である a catが文の最初にいきなり出ているからです。英語話者は、この原則になじんでいるため、Thereで文を始めることで、『何がどこかにある』ことを新しい情報として出しますよ、と相手に伝える合図になるのです。」

つまり、英語話者としては、これは前回指摘した「話者が伝えたい重要な情報や相手にとって初めて耳にする新しい情報は文末に、という『文末焦点の原則』」に照らして「不自然」に聞こえることを避けたいという気持ちが強いということです。

ですから、新しい情報であるa catをできるだけ後ろにもっていくための方策として、There を形式上の主語としてまず置くというわけです。

したがって、それが古い情報であるthe catであれば、その方策をとる必要がないため、The cat is under my car.ならば、何も違和感を感じさせない文となります。

その意味で、There is the cat under my car.などという文は存在しない、いや存在させる必要がないというわけです。

 

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