日本人と英語

WANTの原義は「欠けている」

2026年2月15日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログでご紹介した「英単語の世界#357」からテーマをいただいて書いていますが、第四回目のテーマは「wantの原義」についてです。

日本語では「永田町」が、そして英語ならば「The white house」が政治の中心地を表すように、あるものを表すのにそれと密接な関係にあるものを置き換えることを「換喩 metonymy」と呼びます。

このような空間的な近接だけではなく、「因果関係」のような時間的な近接が意味の転用の契機になることがあります。

例えば、次の二つの英文を見てみましょう。

She wants everything she sees.(彼女は見るものを全て欲しがる。)

The answer wanted courtesy.(その返答は礼儀を欠いていた。)

この二つにwantという他動詞が共通して存在していますが、前者を「~を欲しがる」、後者を「∼を欠いている」と訳すのが一般的ですが、このwantの意味の変遷について詳しく述べている部分を以下に引用します。

「この語は13世紀初め以前に古ノルド語から借用され、当時の意味は古ノルド語と同様に『欠ける、欠く』であったことが分かります。現現在最も一般的な『欲する』の意味は、1706年が初出となっています。この二つの意味は、因果関係に基づいて結びついています。つまり、人は何かが欠乏していると、それが必要であると感じたり、それがなくて寂しいと思ったりし、その結果それを欲するようになるものです。日本語の『整理』という語には『交通整理』のように『乱れた状態にあるものを整える』という意味と『在庫整理』のように『不要なものを捨てる』という意味がありますが、この二つの意味も因果関係によって密接に関連し合っています。『日本国語大辞典』を見ると『整える』の意味は13世紀から見られるのに対して、『処分する』の方は20世紀の用法しか挙げられていません。この場合も、『行為・状態』から『その結果』へ意味がシフトしています。」

ちなみに、この因果関係の順序が逆のパターン、すなわち「結果」から「(先行する)行為・状態」への意味の変化のパターンについても指摘がありましたので併せて引用します。

「英語では、be動詞が以下のように『(人が)来る・行く』の意味で用いられることがあります。

I will be home by noon.(正午までに家に帰るつもりです。)

ここでは、『(家に)いる』という状態を表すbe動詞がその状態に先行する行為である『家に帰る』を表すのに用いられています。日本語でも、『さあ、明日は早いから、早く寝た、寝た』のように完了の『た』が、差し迫った命令を表すことがありますが、ここでも『(完了しているべき)行為(=寝ろ)』を表すのに『その行為の結果(=寝た)』を表す表現が用いられているのです。」

なるほど、私は英語と日本語の言語の意味の拡大(転用)がここまで似たような経緯を経て起こっているというのを知り、「仮定法」にみられる日英の一致を知った時と同じくらいの衝撃が走りました。

これも外国語を学ぶ上での大きな楽しみの一つだと思います。

 

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