Yes=いいえ No=はい の壁
2022年8月25日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法を哲学する 」からテーマをいただいて書いていきますが、第一回目のテーマは「YesとNo」についてです。
「Yes」と「No」(品詞は文の構造にはあまり関係のない間投詞と呼ばれるもの)は、英語に触れたことがある人なら誰でも知っている身近な単語です。
しかし、この二つの使い分けとなると、上級者でも苦労するものの代表例であると思っています。
かくいう私もアメリカ留学の最後の最後まで苦労した末にも完全には克服できませんでした。
この簡単そうで難しい文法項目について本書に非常に丁寧な説明がありましたので以下に引用します。
「You are not tired, are you? この質問に『はい(疲れてません)』と同意するにはNoを使う。逆に『そんなことないです(疲れています)』と否定するにはYesを返す。この規則、文法項目として教わってはいても、瞬間的に使いこなすのはかなりの慣れが必要です。ただこのことは、No, I am not.のNoは『はい』の意味になる。ということではありません。英語のNoはそもそも相手に対する『返事』ではないのです。相手の言ったことへの賛否ではなく、一つの否定的事実を知らせる言葉です。これから言うのは否定文の内容です、とあらかじめ知らせる予告信号のようなもの。だから『疲れてないの?』と聞かれて、疲れてないならこのNoはやさしい口調で返しましょう。相手も承知していることに、同意を示すだけなのだから、強く言ったらおかしく聞こえます。逆に、次のYesには『違います』の気持ちがこもる。だから『実はですね』の気持ちを込めてはっきり言わないと変です。Yes, (as a matter of fact), I am.マスターしたいのはこうした基本的な英語を発する時の心のありようです。Yes,とともに出てくる I amのamの強さ、ストレートさを感じてください.Won’t you do it?と聞かれて、『いや、します!』と答えるときのYes, I willもストレートさに満ちています。辞書に出てくる意味ではなく、その語が出てくる心のフレームと親しみましょう。言語表現の生まれる根っこ。その根っこに触れてどんな感じがするかを掴むことを目指しましょう。」
つまり、英語では、ある出来事が事実であるならYes、事実でないならNoとまず表現するのに対して、日本語では相手の発言に同意するならYes、否定するならNoというという点に違いがあるということになります。
このことは、英語は事実の補足を優先するのに対して、日本語は事実の補足よりも相手との関係の保全を優先させることがコミュニケーションの基本にあるということが分かります。
このような「間違い」は、人間の根本的な部分、言ってみれば文化に根差した違いに基づいて起こるものであるため、どうしても最後の最後まで直すのが難しいというのは仕方のないことだと思います。
私などは、反射的な質問に対して日本人がこの回答を間違えずに行えるのを見ると、「おぬしやるな!」と思ってしまいます。