なんとなくを言語化する
2013年4月21日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
今回も本の紹介です。
タイトルは「経営センスの論理」。
以前に、「ストーリーとしての競争戦略論」という本を紹介しましたが、その本の著者である一橋大学の楠木建教授の最新著作です。
楠木教授の本を読むと、彼が学者の本分を本当に心から理解していて、学者という仕事に徹して、いるということが良く分かります。
よく、「経営学者が偉そうに経営学を語っても、彼らは実際に経営できないじゃないか」といわれることがあります。
そうです、これは正解だと、楠木教授はまず言ってしまっています。
そのうえで、自ら経営学者としての仕事を的確に定義して、その仕事を見事に粛々と遂行されていることがこれらの本を読むとビシバシ感じられてくるのです。
経営は、アートの性質を多分に有しています。
つまり、サイエンスではないということです。こうやればこうなるという因果の論理が表面的には通用しないものです。
時代の背景、タイミング、運、さまざまな要素が複雑に絡まった中で結果だけが評価される世界です。
言ってみれば、「なんとなく」でしか言い表せない世界です。
ですので、結果的に成功すれば、それが正解ですし、どんなに理屈にのっとって丁寧にやったとしても結果的に失敗すれば、不正解です。
ですから、理屈を積み上げ、整理することが仕事である学者がそもそも「経営」を行い成功させることなど求めるべくもないことだということです。
その中で、経営学者の仕事を定義するとすれば、この「なんとなく」を言語化することです。
言い換えれば、個別具体的な経営にかかわる事象の背景にある「本質」を抽出して,誰もが理解できるように整理してあげること。
これは、当事者である経営者ではなく、まさに経営学者が行うべきことです。
そして、楠木教授は、本当にそれがうまいと思います。
「簡単なことを難しく説明する」ことが得意な大学の先生は多いかと思います。そして、その仕事は無意味であるばかりか有害です。
「難しいことを難しく説明する」ことは、普通の仕事かもしれません。
しかし、楠木教授の本は間違いなく「難しいことを簡単に説明」してくれているのです。
いつも、「ああ、この言葉いただき!」という感じで、ノートに書き写します。
子供のころ、森の中でカブトムシを捕まえた時に感じる妙な気持ちの高まりと同じような感覚をそれらの言葉をいただくたびに感じることができました。
今後とも是非、そのような仕事を継続していただきたいと思います。