アリババの経営哲学
2015年3月22日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
前回、ソフトバンク前社長室長であった嶋聡氏がソフトバンク社長 孫正義氏の参謀としての8年にわたる軌跡を詳細に記した著作である「孫正義の参謀」をご紹介しましたが、ソフトバンクに関連して、中国のインターネット企業アリババグループのジャック・マー氏の人生について書かれた「アリババの経営哲学」を読みました。
このジャック・マー氏とソフトバンクの孫正義社長との間には非常に興味深いエピソードがあります。
2000年に孫社長は投資先の開拓として中国のスタートアップのベンチャー企業20社の若い社長に会い、それぞれ10分ずつのプレゼンを受けました。
その中で1社だけ、即断即決で投資をすると決めた会社がアリババです。しかも最初の5分だけ話を聞いただけで出資を決め、しかも1~2億を希望するジャック・マーに20億受け取って欲しいと申し出たのです。
そのとき会った20名の中でジャックマー氏が、圧倒的に伸びるという強烈な予感があったと言います。精緻な数字や、卓越したプレゼンの資料があったわけでもありませんでした。孫社長曰く、決め手は「動物的勘」だけだったと言います。
アリババの時価総額は2014年のニューヨーク株式市場へのIPOで4000倍の25兆円となり、このときの20億円は結果的に、8兆円になりました。
私は、孫社長がこのような決断に至った根本的理由がいかなるものであったのかを考えるにあたってのヒントが本書に書かれているのではないかという期待とともに読み始めました。
そして、ジャック・マー氏の「失敗についての研究」という考え方がそれに最も近いものではないかと感じました。以下、その部分を引用します。
「よく、アリババ大成功の秘密についていろいろと言われていますが、もし、数え切れないほどの失敗がなければ今日の我々はなかったでしょう。すべての大木の下には莫大な栄養が眠っています。その栄養は多くの人の過ちから来るのです。私はMBAを持っている人たちと、我々商売人の違いはここにあると思います。MBAで学ぶのはいかに成功したかです。しかし、私がこの10数年間の企業経験から学んだ最大のことは、他人の失敗の原因、そして人が必ず犯してしまう失敗と言うものを考え続けろと言うことです。なぜなら、成功するための要因は多く、それを学ぶことはできません。ちょうどいい人に出会ったとか、運がよかったとか、、、。しかし、失敗はそうではありません。多くの企業が失敗する理由は同じようなものです。それをよく学べば、失敗は避けられます。」
成功事例は、属人的であるのに対し、失敗事例は普遍的だということでしょうか。
しかも、成功事例はなかなか実体験が難しいけれども、失敗事例は実体験に事欠きません。であるならば、その失敗事例について「考え続ける」と言う姿勢を身につけられれば、成功しないわけがないということです。
楽天の三木谷社長の「仮定」⇒「実行」⇒「検証」⇒「仕組み化」という考え方もそうですが、「失敗」を忌み嫌って排除するのではなく、「失敗」を「成功」にいたるために必ず通る必要のあるプロセスだと認識して、それ自体を「活用する」という考え方が「圧倒的に伸びる」必要十分条件だということではないでしょうか。
14年前、孫社長は「動物的勘」によってジャック・マー氏にその必要十分条件を見つけたのかもしれません。